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天使の顔のryosukeのレビュー・感想・評価

天使の顔(1953年製作の映画)
3.8
映像演出は普通のフィルムノワールという感じでそんなに個性は感じないので、ジーン・シモンズの美しさでもっている作品という印象はある。プレミンジャーは作家性がある監督という感じではないのかな。まあ彼のスパルタが名演を引き出しているのかもしれないが。
本作のジーン・シモンズの美しさは、常に余裕を漂わせていて表情も変わらないロバート・ミッチャムが彼女の危険さに気付きながらも惹かれてしまうことに充分な説得力を与えている。本当に正しいファム・ファタール像という感じ。
美しい二人のヒロインは最初のバトルシーンからして痺れさせてくれる。モナ・フリーマンもかなりの輝きを放っていて贅沢。
落下のショットにジーン・シモンズのピアノが重なる演出なんて恐ろしいな。
裁判後のジーン・シモンズがそこまで魅力的に見えないのは撮り方や表情のせいだろうか。ロバート・ミッチャムがもう彼女に魅力を感じていないということの現れでもあるが、それ以上に彼女に罪悪感が芽生えてしまったことが原因だろう。ファム・ファタールは悪女であるからこそ怪しい光を放つのであって、良心の呵責が生まれることはファム・ファタールにとっては死なのだ。ただやっぱり裁判シーンからちょっとダレたな。もしこのまま終わってしまうとかなり尻すぼみだなあ。
...とか思ってたらラスト間際の会話でジーン・シモンズの顔に妖気が復活している気がする...なんか車で送ろうとしてるし...雲行きが怪しいぞ、これから繰り返されるショットの連鎖が目に見えるようだ...
...という訳でやっぱり彼女は生粋のファム・ファタールだった。お見事。
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