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ぼくのバラ色の人生のMTMYのレビュー・感想・評価

ぼくのバラ色の人生(1997年製作の映画)
4.8

7歳のリュドヴィクは女の子に憧れる男の子。子供向けテレビ番組のヒロイン・パムに導かれ、女の子らしく着飾った自分の空想に浸ったり、近所の優しい男の子と結婚したいと思うようになる。家族はそんなリュドヴィクの憧れを知りつつも、いつかは治る一時的な病気として真剣に受け止めようとはしない。しかし、リュドヴィクの女の子への願望は次第にエスカレートし、学校や近隣に影響が出始めてしまう。困った両親は彼を精神科へ通わせることになるのだが…
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題名、パッケージのイメージからは想像がつきにくいくらい辛いお話でした…
性についてなやむ作品こそ多いですが、
10代や20代といった”青春世代”の話の展開よりも、
無垢で純粋でまだいろんなことを知らない年代の子どもの話は久しぶりだったので、心に深く刺さりました。

なんといっても、この作品の感心ポイントは、
子どもの無垢さと大人の社会のギャップの描き方だと思います。

大人にとって、科学や数字で証明できない世界は非現実として「だってそういうもんだから」と絶対的なものになってしまいます。こどもたちは、大人のそういう「だってそういうもんだから」を見て学んで世の中や社会という規律を知っていきます。
「男の子だから女の子の格好するのはおかしい」「男の子は女の子になれない」「テレビの世界は現実じゃない」など、
こどもの「なんで?どうして?」という必死な挑戦状は、大人がちゃんと向き合ってあげないと、「だってそういうもんだから」という魔法でなだめられてしまうのです。

いまこそ多様性が重視されてきている世の中ではありますが、
そうであると信じてきたものがそうでなくなる恐怖や不安というのは、誰でもつきものだと思います。
だから、リュドヴィクの気持ちも痛いほどわかるし、彼の親の気持ちもわからないでもないわけです。(自分自身がそういう状況にもし直面したときに、経験がない分、本当に正しい選択ができる自信も100パーはないので…)
誰が悪い良いということではなくて、それぞれの考えに対してとりあえずハグから始められる、そんな世の中になればと思います。

あと、題名の「バラ色」ですが、日本語で「バラ色の人生」というとなんだか華やかで煌びやかな情熱的な響きがあり、ちょっとニュアンスが逸れる気がします…
英題の「pink」のほうが、「男の子は青、女の子は赤やピンク」というなど、ジェンダーや性について言及できるニュアンスがあり、言いたいことがわかる気がします。

この時代だからこそ、改めて観ておきたい作品だと思いました。
主人公のリュドヴィクを演じた少年も、この世界観のハマり役で見どころです。ぜひ。
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