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平成ジレンマのYasuyukiMuroのレビュー・感想・評価

平成ジレンマ(2010年製作の映画)
4.0
東海TV制作のドキュメンタリー。戸塚ヨットスクールと言えば80年代に生きた者なら誰もが知るスパルタ学校。学校や家庭で手に負えない所謂 非行少年を預りヨットを通じて更生させるという。しかしその行き過ぎた指導・体罰により、訓練生の事故死、自殺者が相次ぎ、戸塚校長は裁判の末6年の実刑を受ける。このドキュメンタリーは2006年に刑期を終えた戸塚校長が再開させたスクールに1年近く密着する。

自分の小中時代は、宿題忘れりゃ普通にビンタだったし竹刀を持ち歩く先生も居た。それが普通だったので大して萎縮しなかったし文句を言う親も居なかった。まぁそれが正しいなんて1ミリも思わないけど、戸塚校長は「学校から体罰が消えた現在、教育現場はどうなった?」と問うてくる、教師は萎縮し、不良にすらなれない無気力な若者が増え、結果数多くの引きこもりやニートを生んだのだと、、、驚いたのは、年間70回もの講演依頼が来て、学校・PTA関係者が集まっているという衝撃の事実。

戸塚校長、、正直もっとオラオラ系のエネルギッシュな人を想像してたけど、画面で見る彼はなんだか弱々しい、散々マスコミや世間から叩かれたからかパンチドランカーよろしくその笑顔は歪んでいる、、、

平成ジレンマ。秀悦なタイトルだ。
体罰があった方が効果的と考えるのに、体罰を封印せざるを得ない戸塚のジレンマ。

立ち直るには若いうちに手を打った方が良いと言いつつ、20代以上のニート訓練生が増殖するジレンマ。

自傷行為のある子は受け入れないと決めたのに頼まれて受け入れてしまうジレンマ。

悪名高きスクールに、それでも藁をも掴む想いで子供を預ける親のジレンマ。

様々なジレンマを抱えつつ、戸塚ヨットスクールは今も営業を続ける。
そして取材の最中、18歳の少女に起きた悲劇、、、歪んだ笑顔すら消える戸塚校長、鬼の首をとったかの様に群がるマスコミ、それでも感謝の言葉を述べる少女の親、、、

東海テレビドキュメンタリー、なかなか観れる機会少ないですが、自分の価値観を揺さぶられる力作なのでオススメです。
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