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MOTHER マザーのhorahukiのレビュー・感想・評価

MOTHER マザー(2004年製作の映画)
3.4
蓋をしてはダメな過去。

1958年フレンチアルプス。閉鎖間際のキリスト系孤児院にメイドとしてやってきた主人公が、封印された孤児院の秘密に引き寄せられるオカルトホラー。

こちらでも『ゴーストランドの惨劇』がやっとこさ公開なので、パスカルロジェ監督の長編デビュー作を!『マーターズ』と『トールマン』の陰に隠れちゃってる可哀想な作品ですが、オシャレな感じで面白かったです。

お腹を殴る、タバコを吸う、聴診器を投げつけ泣き崩れる。生まれてくる子どもに対する拒絶なのか、それとも子どもが真っ先に犠牲となる社会に対する絶望なのか。多くは語られないけど、バスタブに寄りかかるという象徴的な行為を含めて、母となることへの不安や未熟さ、そして抵抗を感じる主人公の心情表現を細かく静かに積み上げていくのが見てて辛い…。

時折態とらしくピントが合うキリスト像(や本作の舞台)からも、堕胎という選択肢なんてなく、望まれずに生まれてくる子どもと、親となる覚悟を持ちきれずにいる母親に焦点を当てようとする意図が読み取れます。

『マーターズ』と呼応するかのような背中の傷(の治り具合)からは幼少期(あるいは数年前)の虐待を読み取ることが出来るので、彼女自身が「犠牲となった子ども」のひとりなのでしょうね。そう考えると『トールマン』で語られた「断ち切れない循環」が浮かび上がってくるし、望まれずに生まれてくる子どもと未熟な母というテーマはそのまま『トールマン』へと繋がっていくわけで、初期三作は密接に関連した物語であることがわかるとともに、ロジェ監督の中にある共通テーマはやはり「子ども」なのだとわかります。

そして本作も『マーターズ』『トールマン』と同じく観客に対して問題提起をして終幕となる。ただ『トールマン』ほど中立ではなく、(時代背景も合わせてではあると思いますが、)批判を強めた作品になっていると感じました。何が子どもにとっての幸せなのか。彼女は真の意味で「アンナ」となった(あるいはなることをやめた)ということなのかもしれません。そういえば『マーターズ』も主人公の名前がアンナでしたね。

他の方も指摘しているように本作はバヨナ監督の『永遠のこどもたち』と極めて近いテーマを扱っているし、あのイメージも考慮に入れると本作から影響を受けて製作されたのは間違いないのではないかと思います。むしろパクリと言っても良いレベル(笑)

私的には初期三作では『トールマン』が一番映像演出的に洗練されてると思ってるんですけど、それに比べて本作は盛りすぎというかやり過ぎというか。何がどうなんかわかんないけど、何となく違和感を覚えるところや空回りしてるように思うとこがあって、それがノイズに感じてイマイチ集中できませんでした。ひとつひとつはスゲェ好きなんだけど、繋がりが悪いのかな。拘りが凄いのはめちゃわかるんですけどね〜。『マーターズ』でも同じような感覚があって、『トールマン』でだいぶ薄まった感じ。新作はどうなってんのか楽しみです♫
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