滝和也

ヒッチコックのゆすりの滝和也のレビュー・感想・評価

ヒッチコックのゆすり(1929年製作の映画)
3.5
うーん。それでいいのか?

アルフレッド・ヒッチコックの英国時代初期の作品であり、イギリス初のトーキー作品。もちろん彼の初トーキーでもある。サスペンスの巨匠に駆け上がる二段目と言うところか。

警察官の彼を持つアリスは出来心で芸術家とデート。彼の家について行ってしまう。当然のごとく襲われたが近くにあったナイフて彼を殺してしまい逃げ出す。それを見る謎の影が…。


殺人シーンから殺人を犯してしまった彼女が追いつめられていく心理を描く描写がヒッチコックらしく見事。カーテンからだらりと垂れ下がる腕がフラッシュバックし、他者の腕に重なる、シェイカーを振るネオンがナイフを振り下ろす形にかわり、お喋りなおばさんの会話はナイフの単語だけ聞き取れ、リピートする。

最初はトーキーでなく、サイレントで取り始めたにもかかわらず、実験的かつ印象的なシーンを作るのはさすがとしか言いようがない。

ただラストは曖昧になっている。ヒッチコックによれば、別の悲劇的なラストがあったが時代が許さなかったそうだ。それさえあればと言う思いもあるが、敢えてラストは観客に委ねたとしたらそれはそれでありかもしれない。

ヒッチコックは無思想の巨人とも言われる。時代性に反したアンモラルな作風の片鱗が見て取れる作品です。

短いので見やすいです。合間に如何ですか?ヒッチインパースンはネタバレです。
滝和也

滝和也