ドント

コールドプレイのドントのレビュー・感想・評価

コールドプレイ(2006年製作の映画)
3.5
 2006年。やったァこれは面白かったぞ。雪山にスノボをやりに来た若者5人、ところがひとりが大ケガをして、どうしようかと思っていたらホテルが。しかし廃墟。それでも酒や乾き物はあったので暖炉をつけて山を降りるタイミングを見計らっていたら、殺人家主が帰ってきてコラーッ! グサーッ! される極寒鬼ごっこホラー。
 殺人鬼ホラーで男3女2の若者となると「感じの悪いマッチョ」「尻軽女」「理解のある優等生」「イジられ非モテ」「ヒロイン」……みたいな取り合わせになりそうだが本作はみんな明るくてメッチャ仲良し。カップル2組にシングルひとりだけど、残った彼も別にハブられてるわけでなくたまたま今彼女がいないような感じ。厭さのない爽やかなグループで、悪いこと、背徳的なことはしていないし、しない。
 殺人鬼が「コラーッ!」する契機であるところのイチャイチャがはじまりそうになるも、女の方が「まだこういうのは早いかな、って……」と断る。ものすごくちゃんとしている若者たちだ。コトが起きても節度、判断力があり、取り乱したり無茶はするが、アホな行動には走らない。その他、こういう系列の「お決まり」から外れている部分が多い。なので、普通の殺人鬼映画よりもヒヤヒヤ度が高くなる。これ、逆張りとかじゃなくきちんとそういう設計で作っている。ここがまずナイス。
 次に殺しがなかなか起きず、発覚もしないのがよい。若者たちは廃墟だと思っているのでまぁのんびりしている。さらに絶妙のすれ違いやタイミングの悪さで間一髪で殺されたり、惨劇の発見が遅れたりする。このあたりの意地の悪さと「遅延」が実に上手く仕上がっている。キャラクターたちの集合離散、動かし方も自然で、「殺されるために行動する」みたいなのがない。情報の並べ方もスマートだし、ホテルの広そうでそんなに広くはない様子もスリルに一役買っている。ちょっと気を抜くと追いつかれる、くらいの……
 さらに殺人家主も超人ではないのですごい力で殺したり一撃必殺ということもできない。しかしそれは若者サイドも同じ。このあたりのバランス感がいい案配で、出演者実質6人(+2、3人)というチンマいスケールなのに、非常に満足度が高い逸品となっている。青緑の寒々しい色味や、照明のオン/オフ、物音の使い方もグッドで、これはまさに「拾い物」といった作品であろう。
 なお監督はこの後フィヨルド山津波パニック『ザ・ウェイブ』(かなり面白い)を撮り、ハリウッドに渡るもコケちゃってノルウェーに帰還。巨大妖精怪獣映画『トロール』がネトフリで公開中。本作の、「廊下を逃げようとしたヒロインに風がブワッと当たり髪がなびき、誰かが侵入してきたことを悟る」というショットは素晴らしかった。こういうのをバシッと撮れる人は応援したい。
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