類稀なる嗅覚。
愛情と狂気と官能。
18世紀フランスのパリ。主人公ジャン=バティスト・グルヌイユには、類稀なる嗅覚の才能があった。
孤児として育った彼は苦労の末、老舗の香水店の店主に拾われる。彼はあらゆるものの匂いを永く残したいと考え、香水店の技術と知識を生かして試行錯誤する。
そんな中、美しい娘の匂いを残そうとした彼は、思わず彼女を殺してしまう。
そして「究極の香水」を創り出そうとした彼は犯行を重ねて行く...
どうもグルヌイユは、生まれつき感情を持っていないようだ。
嗅覚異常の人が愛情を感じる能力が欠落しているという話は聞いたことがあるが、嗅覚に優れた人が愛情を感じられないとは、まさに「過ぎたるは及ばざるが如し」だ。
彼は生来感情が欠落していたため、すべての事象を匂いとして理解し、常にそばに置いておきたいと思ったのだろう。愛情を感じたことがないが故に、本能的に愛情を感じたいと渇望したのだろう。
匂いとして嗅ぎ取った美しい娘への想いを調合した「究極の香水」は、その香りを感じた人の愛情を異常なまでに増幅する匂いを醸し出そうとしたものだ。
だが実は、その匂いの効果は愛情ではなく、その時一番欲した感情を増幅したのではなかろうか。
一般的な暮らしをしている市民は性欲を、娘を殺された父は若者への強い愛情を、日々生きるか死ぬかの貧民は食欲を、異常に刺激されたため、あのラスト間際の集会のシーンとなるのだろう。
そして自分の生まれた貧民街で王になろうとした彼は、民衆の欲望に食い滅ぼされることとなる。
彼を「変態」という言葉で括るのは簡単だが、最後まで愛情を感じられなかった彼のことを考えると悲しい。
物語を追うごとにグルヌイユへ感情移入できる演出が良かった。
ハナマル!
2017/01/08