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かぐや姫の物語のMoviePANDAのレビュー・感想・評価

かぐや姫の物語(2013年製作の映画)
5.0
『生きてた証 -あかし- 』

『となりのトトロ』と『火垂るの墓』以来の二大監督作同時公開という事もあり、話題である事は当然分かってはいたものの、どうしても“あのタッチ”に食指が動かず、また結局公開が延期になった事もあり結局今まで観てこなかった高畑監督の遺作。

元々高畑監督の作品は、確か『火垂るの墓』を子供の頃に、『平成狸合戦 ぽんぽこ』を“いつぞや”観ただけなはず。しかし人とは勝手なもので、亡くなって興味が湧く事多々あり... マイケル・ジャクソンの時もそうだった...

プロデューサーの西村義明氏がインタビューで語った、あまりに壮絶で終わりの見えない製作状況に興味があった事もあり、WOWOWで放送された90分のメイキングを先に鑑賞。とにかく過去に例を見ない遅延だった事と、完成が見えない前代未聞のプロジェクトであった事を知る。また、作画完成前に声を吹き込むというプレスコという形式を目の当たりにし、純粋に「よくぞこの様なやり方で」完成したものだと思う。(現に完成を待たずして翁役の地井武男が亡くなり、追加収録として三宅裕司が代役を務めている。)

ここ最近の子供達がどうなのかは分からないが、かぐや姫と言えば日本のおとぎ話の“てっぱん”のひとつとして、当たり前の様に自分の子供の頃の記憶にストックされていた。だからこそ、改めて観ようという気が起きなかったのかもしれないが、事実観てみて「そうそう、こんな話だったな」と感じつつ、今やどちらかというとむしろ翁視点で観ている自分にはたと気付くw

あと、こちらの映画、割と長尺。
しかし、描かれた“画-え-”が、心の機微を、感情の揺れを伴わせ観ているこちらに伝える。だから、不思議と長さは感じなかった。観る前は食わず嫌いで拒んでいたものの、監督が言う“最初に描いた時の想い”みたいなものが、確かにこの画から伝わってくる。そして、まさに喜怒哀楽人間の全ての感情と、背景を含めた一枚ごとの画とのシンクロが本当に素晴らしかった。

“行って戻る”話に傑作映画があったが、この話は“降りてきた者がまた昇りゆく”話。ひとりの少女のひとときを描いた話ながら、人間の人生の縮図の様にも見える。また、悲劇とはいえ、ただただ悲壮感溢れるものとはせず、同時にぬくもりにも溢れている。終盤に進むに連れ、涙が止まらなくなってしまった。

劇中、まさに生の謳歌と言うべきクライマックスの場面。メイキングを見るに監督が一番こだわった場面の様。

「生きる為に生まれてきた。」

普遍的な物語に込められた想いと死生観。ただの悲しい物語と見ることも出来るが、奇しくも本来同時公開の予定であった『風立ちぬ』同様「生きねば」を強く感じさせる作品だと思った。そして、宮崎駿監督の引退会見を見ながら「なぜ、わざわざ映画監督が引退を表明しなければいけないんだ」と冗談っぽく周りと話していた高畑監督の“結果的に遺作となってしまった”作品。まだまだ、というよりますますやりたい事があったであろう高畑監督。この映画、本当に素晴らしい“生きてた証”だと思う🐼
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