〈変人と変人のひとりインテリ漫才〉
イングマール・ベルイマンの『仮面/ペルソナ』が映画界を震撼させた翌年、よりカラフルで奇妙キテレツな人格分裂映画がベルトルッチの手から繰り出された。
前作『革命前夜』然り、どうもこの頃のベルトルッチはゴダールに心酔していたようだ。彼にとって初のカラー映画となった本作でも、ゴダールに倣ったような試作が鏤められている。たとえば、赤と青をパックリと分けた色遣い、音楽のぶつ切り、哲学的なセンテンスの引用などである。
ストーリーはドストエフスキーの『分身』を叩き台にしているらしいが、実はこの「分身」「自己撞着」というモチーフ自体、ベルトルッチ作品には一貫しているのだという。いまの私がパッと思いつくのは『暗殺のオペラ』におけるジュリオ・ブロージの一人二役くらいだが、地元のTSUTAYAで借りられ続けている“私にとっての幻の作品”『暗殺の森』からも同様のモチーフが窺えるらしい。
内気な若手教師と殺人鬼。このふたりの人格はどちらともキモく、収集のつかない知識のぶつけ合いを延々披露するため、映像を除いてはあまり楽しめなかった。けっこう難解な作品。劇伴はモリコーネ。