円柱野郎

桃太郎 海の神兵の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

桃太郎 海の神兵(1945年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

国策アニメ「桃太郎の海鷲」の姉妹編。
南方諸島における海軍陸戦隊落下傘部隊の奇襲作戦を、擬人化された動物たちの姿で描いた戦意高揚のための国策長編アニメーション映画。

全体的には三幕構成かな。
一幕目は休暇で故郷に帰ってきた猿やキジ、熊たち兵隊の平和な姿。
二幕目は南方基地で海軍設営隊が野営の航空基地を建設する姿。
三幕目は南方を支配する白人の基地を、日本の落下傘部隊が撃破する姿。
国策映画にあっては三幕目の快進撃こそが重要だろうけど、一幕目の故郷でのふれあいと二幕目の故郷からの手紙の場面に、作り手の平和への思いがにじみ出ていると感じる。

擬人化された動物たちの姿は「子ども向け」というところが大きいんだろうけど、歌に合わせて動かす演出はなかなかお見事。
ディズニーの「ファンタジア」の影響下にあるという事だけど、戦中の日本にあってこれほどの熱意を感じる動画演出が出来たことに敬意を表したい。
なにせリミテッドアニメではなく、フルアニメーションで動かしてるんだもんなあ。
走り出すキャラの後ろに煙の記号が出るところなどはカートゥーンの影響もあるのかな?
終盤の鬼が島の敵兵が明らかに白人なのが滑稽だが、敵兵達にちゃんと角が生えているのがなんとも。
しかも骨格のないフニャフニャした感じだし、(威厳のある桃太郎との対比のためもあろうが)腰抜けの鬼畜米英を絵に描いたらこうなるってことか。
そういや、あからさまにポパイな敵兵がいて笑ったw

擬人化された動物はどれも可愛らしいデザインだけど、三幕目の冒頭にあるゴアの王様の話で登場する人間のシルエットはリアルな造形なので、そういったリアル路線も技術的には描けるには違いない。
思えば飛行機や武器・装備のデザインは実に写実的だったし。

二幕目でも多数の動物が登場するけど、一幕目とは違って象やサイなどは擬人化というよりは動物そのままのデザインで動かしている感じ。
テングザルなどの南方系の猿などは、ソンコ風の帽子もかぶっているし明らかに現地人のイメージだろう。
そういった動物たちに、兵隊が日本語を教えている場面が描かれているのは興味深い。
この辺の皇民化政策に関する描写は国策映画としてのテンプレートみたいなものだろうけど、それすらも演出の中でミュージカルに取り込んでいくところに作り手の想いを感じるね。
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