新潟の映画野郎らりほう

狂武蔵の新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

狂武蔵(2020年製作の映画)
3.1
【独斬心(Doc Kill Mentally)】


陽光が傾き 足許に丈長の影が伸びる。落日の迫る ほぼ真横からの入射光が 事態の逼迫性を伝えると共に、武蔵(坂口拓)に 煌めきとして降り注ぎ、彼の この「瞬きの生/
紙一重の生」(“故に”強く実感される)を祝福する。


〈追記〉
其の侭 日没、残照、漆黒に繋げ、闇黒の画面に斬り合いの音だけが響き 幕、 であれば より精良であったろうに。
ほぼキャストの剣技(と体力)に依存したワンカットは、作品にDoc Kill Mentallyな様相を付与してはいるものの 映画としてはどうなのだろうか。
ワンカットで 腕が落ち 首が飛ぶ ― そういった仕掛け/スタッフワーク側の創意工夫がまるでない(鎖鎌の半裸男との決闘で、柱を死角に顔貌が紅血で染まる程度では弱い)。キャメラルートも単調。引き画/寄り画/フォーカスへの配慮も足りない。
斬り倒されては都度画面に登場する“殺られ役”も、フレームアウトを利用して衣装替え/鉢巻等を脱着し 別人と成ればいいものを、馬鹿正直に同一人物として何度も画面に登場する始末。
尤も、同一の屍者達と延々と斬り合う“非現実/夢幻”とも思えなくもないのだが。
であればこそ、前述した残照の“黄昏時”を、人物相貌識別不能の“誰そ彼”にすべきだったのにと 尚思うのである。




《劇場観賞》