kuu

海がきこえるのkuuのレビュー・感想・評価

海がきこえる(1993年製作の映画)
3.7
『海がきこえる』
製作年 1993年。上映時間 72分。
『月刊アニメージュ』に連載された氷室冴子の小説を、スタジオジブリがアニメ化した青春ストーリー。
日本テレビ開局40周年記念番組として製作されたテレビ向けのスペシャルアニメ。
『きまぐれオレンジ★ロード あの日にかえりたい』などの青春劇を手がけてきた望月智充を監督に迎え、スタジオジブリの若手スタッフが中心となって手がけた。
1993年5月5日にテレビ初放送。
同年内にいくつかの劇場で公開もされた。

高知県に暮らす高校生の杜崎拓。
2年生のある時、東京から武藤里伽子という転校生がやってくる。
勉強もスポーツも万能で美人の彼女は、瞬く間に学校中で知られた存在となるが、里伽子自身は周囲になじもうとしなかった。
拓の中学以来の親友である松野は里伽子にひかれていたが、拓にとっての里伽子は、松野の片思い相手という、それだけの存在だった。
しかし、高校3年のハワイの修学旅行で起こったあることをきっかけに、拓は里伽子が抱えている家庭の問題を知り、それによって2人の距離は縮まっていくようにみえたが……。

望月智充が初めて監督し、宮崎駿や高畑勲以外の人物が監督した最初のスタジオジブリ作品である今作品は、よく構成され、美しく、そして、激しく感情的な作品でした。
世界的にも高い評価を得ている日本のアニメーションスタジオが、ファンタジーに満ちた素晴らしい作品だけでなく、深い現実味を帯びた作品や、現実の場所を巧みに舞台とした作品も製作できることを早い段階で示している。
考えてみれば、今作品で描かれるストーリーは、連続アニメ作品にもなりうるほど本格的です。
複雑で満たされない高校生の恋愛を描き、アニメの中でも最も繊細で深みのある方法で表現している。
登場人物は純粋で、彼らの抱える問題は明確で理解しやすく、絵の雰囲気も趣があり、真のアニメファンなら必見の作品なんちゃうかな。
平和でお行儀のいいティーンエイジャーの杜崎拓は、可愛い転校生の武藤里伽子が現れたことで、居心地のいい平穏な世界が突然ひっくり返る。 この、ちょっと社交的で、生意気で、鉄の意志を持つ少女は、拓の人生に数々のトラブルをもたらす。
里伽子のわがままと他人への嫌悪、そして、彼女の絶え間ない要求と退屈な気まぐれに、彼は怒りと苛立ちを覚える。
しかし、拓は、そんな不安な体験を通して、実は学校で初めて彼女を見たときから、ずっと彼女に惹かれていたことに気づく。
残念なことに、親友の松野豊も同じやった。
このことが、少年と恋する少女との間にちょっとした軋轢を引き起こす。
しかし、この奇妙な三角関係に勝者も敗者もない。  
拓は、思いがけない東京への旅によって、里伽子との距離を縮めているように見えるが、里伽子の混乱した心の中で本当は何が起こっているのか、まだ理解できていない。
映画は回顧的に語られ、全編の主人公である拓による洞察に満ちたナレーションによって、生身の人間による通常の長編映画のようにさえ見える。
完璧な美術監督は、高知や東京、陽光降り注ぐハワイのビーチであろうと、魔法のようにカラフルな風景を描き出し、無類の魅力を与えている。
何も起こらない、安定したストーリーがない、なんて感想も目にしましたが、今作品はプロット主導の映画ではなく、キャラ主導の映画なんやろな。
たった72分の映画であるにもかかわらず、登場人物はみなよく練られていた。
きっと多くの人が、3人のティーンエイジャーが行動の過程で経験する感覚に共感できるに違いない。
テーマが重いため、子供向けではなく、ティーンエイジャーや大人向けに書かれた映画であることに注意されたいかな。
全体として、ファンタジーというより現実的な、もうひとつのスタジオジブリを垣間見たければ、今作品を手に取る価値はあるかな。
彼らの作品の中ではあまり知られていない部類に入るが、それでもコレクションの中では強い位置を占めているかな個人的には。
kuu

kuu