オリジナルタイトルの"Tutti i santi giorni"は直訳すると「すべての聖名祝日」となり、「毎日毎日」という意味で用いられる熟語なのだが、それには意味がある。付き合って6年になるグイドとアントニアは、ローマ郊外にある家で同棲している。ホテルのフロントで夜勤をするグイドは古典文学を愛するインテリで、毎朝、帰宅するとすぐに淹れ立てのコーヒーとクッキーを持ってまだ寝ているアントニアの枕元へ行き、「本日の聖人」に関するウンチクを語りながら、彼女を優しく起こすのだ。
ありがちなストーリーなのだが、主人公を演じる2人の素晴らしい俳優の演技によって、とても愛らしく切ない映画に仕上がっている。最近ではイタリア映画祭でも上映された『皆はこう呼んだ「鋼鉄ジーグ」』で快演を披露し、ドラッグに溺れる若者を演じた”Non essere cattivo(原題)”では強烈な印象を残していたルカ・マリネッリは、ここでは一転、内気なオタク青年を演じきり、その振り幅の広さに驚かされた。また、作品同様Thonyの名で歌手活動を行っているフェデリカ・ヴィクトリア・カイオッツォは、奔放で傷つきやすい女性心理を繊細に演じ、そのロマンチックな楽曲もまた作品全体の甘酸っぱい雰囲気を盛り上げていた。この2人がいなかったら、この作品はもっと凡庸な映画になっていたのではないだろうか。