Anima48

ウォールフラワーのAnima48のレビュー・感想・評価

ウォールフラワー(2012年製作の映画)
4.0
切なくて、新鮮で、でも懐かしい気もする。やっぱり10代は悩みが多い時期なんだろう。この映画の持つ苦みはいろんな貌を持ってた。(多分時期は90年代?アナログの黄昏とデジタルの夜明け前の雰囲気がある。)スクールカーストや恋愛、トラウマ、同性愛、孤独、友情、暴力。悩み・苦しみのカタログを眺めている気分になってしまうけれど、過度に暗くならずに自然体に描かれてる。

心に傷を負って療養してたっぽいチャーリー、入学前夜、高校生活に怯えて卒業の日までの日数をカウントしている、登校して早々いわゆるはみ出し者扱いで結構きつい。馴染めない人にとっては、学校って机といすが並んでいるジャングルみたいなところで、油断すると残酷に餌食にされてしまう。

変人・ひねくれ者・悪徳の徒として学校でつまはずきにされているはみ出し者グループでも楽しみがあり最高の瞬間はあって、それは普段抑圧されているもの同士の本音の付き合い、センスの合う音楽の趣味やイベント(なんと舞台!)だったり。そして恋愛、だって10代だもの。そしてグループの中でチャーリーは高校生活を充実させていく。すごくキラキラしてて、スリルや出逢い、秘密の分かち合いとか。けれどチャーリーの心の傷は、折に触れてそこに影を落としてしまう。

チャーリーの心にあった傷は何なのか、それが小出しで明らかになるのでまるでミステリーのように作用して、青春ものをあまり見ない人でも引き込まれて見てしまうだろうと思う。そして時々に発せられる言葉が、見ている僕の苦い思い出を見透かしているかのように掘り起こす。これって他のみんなもそうなんだろうか?

自尊心の低さが、キーの場面が続いてる。自分たちのことをはみ出し者とみなしたり、好きな相手に告白せずに傍観したりとか。でもそれって僕たちも日々の暮らしを問題なく過ごしていくためにいつもやっていること。自分ならこの仕事内容で満足しなきゃとか自分が辛抱すれば物事がうまく回るとか。高望みせずに自分とつり合いの取れた相手と付き合うとか。一番あるのが“どうせ自分なんか・・”という態度だったりする。

自信がないから周囲に要求できずに、却って自分をまた貶めて、大切にしてもらえない。でもそれが自分にはお似合いと思ってしまうのかもしれない。そしてたまに相手が囁いてくれる優しい言葉に子犬のように喜んでしまう。普段はみ出し者扱いされているもの間でも、そのように傷つけあってしまう。

「なぜ優しい人はまちがった相手と付き合うんだろう」「なぜこちらを大切にしない人と付き合うの?」という問いに「自分に見合うと思うから」と答えるのはそういったことかなって思う。一つ目の問いはチャーリーが先生に問いかけた時だけど、先生は“その人の状況によってちがうから説明は難しい”などという逃げを打たずに、端的に答えを返していて誠実だと思った。そういった人にであえるのが、よい教室だと思う。

“自分が本当はどうしたいのか”っていうことと真剣に向き合うのって難しい。それができないと、自分が辛抱すれば物事がうまく回るとか考えてしまう。「人の人生を優先して愛とよぶなんておかしい」って相手のことを考えすぎて行動できないことは慎みでも優しさでもないってことかな。考えてみると自分自身への偽善、安全マージンを残した身の振り方に、しっかり視線を注ぐ場面が多かった。

でも音楽・トンネル・風•仲間の場面で素敵な世界を見せてくれる。結局は人生は自分のものだし、まだ若いんだ!未来はいくらでも拡がっている。高校生活はいつまでも続くわけではない。そんな壊れやすい限られた時間を結晶にしてくれた映画だと思う。
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