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言の葉の庭のkuuのレビュー・感想・評価

言の葉の庭(2013年製作の映画)
3.8
『言の葉の庭』 映倫区分 G
製作年 2013年。上映時間 46分。
繊細なドラマと映像美で国内外から人気を集めるアニメーション作家・新海誠監督が、初めて現代の東京を舞台に描く恋の物語。
キャラクターデザイン、美術、音楽など、メインスタッフには、これまでの新海作品とは異なる新たな顔ぶれがそろう。
短編『だれかのまなざし』が同時上映。

靴職人を目指す高校生タカオは、雨が降ると学校をさぼり、公園の日本庭園で靴のスケッチを描いていた。
そんなある日、タカオは謎めいた年上の女性ユキノと出会い、2人は雨の日だけの逢瀬を重ねて心を通わせていく。
居場所を見失ってしまったというユキノのために、タカオはもっと歩きたくなるような靴を作ろうとするが……。

新海誠監督によれば、今作品の中心テーマは
『孤独』
だそうです。
また、今作品は日本最古の歌集である万葉集から着想を得たものだそうで、万葉集では、
万葉集巻2の弓削皇子の歌に
『大船の はつるとまりの たゆたひに
     物思ひ痩せぬ 人の子ゆゑに』
だとか
鏡女王の歌にも
『神奈備の 石瀬の社の 呼子鳥
      いたくな鳴きそ 我が恋まさる』などのように、『恋』は、つまり『寂しい悲しみ』、より正確には『孤独の中で誰かを恋い慕う気持ち』で表現されている。
新海監督は今作品について、社会的な関係において孤独や不完全さを感じながらも、その孤独を解決する必要を感じていない人々へのラブストーリーだと説明していました。

余談ばかりですが、今作品の各キャラの彩色は背景と一体化したもので、自然界で見られる肌の光の屈折を模倣したある種の新機軸です。
これは、光の当たる面と影になる面を分けるために描かれた線も含めてキャラの輪郭を着色し、その上に背景色を組み込むことで実現してる。

人はそれぞれ、愛する人とファンタジーの世界を作り上げる。
そこには外界の雑音は届かない。
静寂は決して気まずいものではない。
人々は夢を通して生きることができる。
約束を交わし、希望と愛と自分自身を感じることができる。
しかし、人に安らぎと安らぎを与えてくれるのは、場所なのだろうか、それとも人なのだろうか?

今作品は雨の朝、公園で出会った2人が、自分の足で個人的な困難に立ち向かうのを助け合いながら絆を深めていく感動的な物語でした。
最小限の台詞と短いながらも辛抱強いテンポで描かれるこの作品は、人物の特徴と象徴的なイメージに大きく依存した興味深い人物研究であり、映画が終わった後も解釈と分析の余地を残している。
感情的な瞬間と荒涼としたアニメーションで観てる側を旅へと誘う。
手描きアニメーション、ロトスコープ、コンピューター・アニメーションをエレガントに融合させたアニメーションは、雨、都会の風景、そして映画のタイトルにもなっている新宿御苑を、写実的な描写で見事に表現している。
ビジュアルはさておき、今作品の個人的に共鳴したポイントは、憧れ、孤独、そして人間本来のつながりの必要性というテーマでした。
感情を揺さぶられ、視覚的にも美しく、テーマ的にも魅惑的な今作品は、46分の上映時間が終わる頃には感動に包まれていました。
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