マヒロ

ドリーマーズのマヒロのレビュー・感想・評価

ドリーマーズ(2003年製作の映画)
4.0
60年代、フランスへ語学留学にやってきたアメリカ人青年マシューは、自分と同じ映画フリークの双子の兄妹と出会い、奇妙な共同生活を始めることになる…というお話。

とにかくベルトルッチ監督のヌーヴェルヴァーグ愛が炸裂していて、作中幾度も映画のシーンを真似るシーンが出てくる(ご丁寧に実際の映画のシーンも出てくるのでなんの真似か分かりやすい)。ダラダラと身のない映画クイズを出しあっている姿はまさしくオタクのそれで、同じ時代に青春を過ごしたであろう監督の自己投影みたいなものもあるんだろうなと感じた。エヴァ・グリーンが自己紹介の際に言う「私は1959年、シャンゼリゼ通りで『ニューヨークヘラルドトリビューン』の声と共に産まれた!」(=ゴダールの『勝手にしやがれ』のワンシーン)というセリフは、カッコいいなと思うと同時にちょっとクサくて小っ恥ずかしくもある。

内容的にはとにかくモラトリアムを貪る学生達の図といった感じで、当時のフリーセックス的な潮流もあってか、3人とも殆ど素っ裸で生活しているのがだんだん笑けてくる。Netflixで見たが、モザイクがあったりなかったりして意外と仕事雑だなと思ったり。ドアップじゃなきゃ良いみたいな規定があったりするんだろうか。

そんな共同生活を続ける中、だんだん兄妹とマシューの間に僅かな考えの違いが現れてくる辺りから、少しずつ違和感を覚えるようになってくる。
ダラダラしながらも将来を見据えなければならないと焦りを垣間見せるマシューとは打って変わって、今の生活を延々と続けられると頑なに信じている兄妹は、どこか浮世離れしているように見える。
最終的に起こる革命の瞬間に両者は決定的な決裂を見せるわけだけど、居心地の良い夢の世界から脱出し現実に戻るか、成功するかも分からない革命という更なる夢の世界へ向かっていくかという選択は、かつて監督が迫られた決断の投影でもあるし、自分も経験した出来事だなと思った。
革命の渦に消えていった兄妹が、破滅的ながらもどこか神々しく描かれているのは、現実の世界に戻ることを選んだ人の、夢を追い続ける者への羨望の目みたいなものもあったのかも。好きな映画の道で成功を収めているベルトルッチは自分からしてみたら充分夢を追う人だけど、かつて一時的にでも「現実」の方を選んだ道もあったのかもしれない…とか思うと、なんとなく親近感わくのだった。


(2018.22)
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