晴れない空の降らない雨

劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。の晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

3.4
 このアニメは『とらドラ!』の3人が今度はオリジナル企画でやってみました、ということだと思うが、あっちのラノベ臭が抜けてより普通の青春小説になっている。視覚的にも、覚えている限りではマンガ的な表現もなかったし、よりリアルなところを目指したのだろう。
 改めて観ると何だかんだイイハナシダナーってなるのだが、最終話を別にすれば露骨に泣かせに来ている感じも意外としなかった。極端にエキセントリックな要素や激しいぶつかり合いといった分かりやすいマリー成分が目立つけど、全体的には地に足のついたお話である。ノイタミナ枠なので11話しかないのだが、説明セリフを極力抑えながら一人ひとりを不足なく描写できており、ラスト2話の怒濤の流れもここら辺の基礎固めができているから観れるものになっているのだと思う。初めて観たときは5、6話あたりから中だるみを感じたが、これもむしろ主人公の躊躇が物語の停滞となって表れているのだと今回は思った。
 そもそも泣かせに来るのが悪いわけでもなく、むしろストレートな感動やそこに至るまでの葛藤を忌避する傾向が今日のアニメには強いので、次第にマリーも手を引きかけている気がするけど、たまにはこんな感じでやってほしいものだ。ただ、感情移入しすぎるのか、とくに後半のセリフ過多は悪いクセだと思う。
 この劇場版は、半分がTVシリーズからのコピペで、全員がめんまへの手紙を持ち寄る現在時(TVシリーズの翌夏)と小学生時代の新エピソードがオリジナル。大きな進展や新事実があるわけでもなく、作品的に正しいといえば正しいかもしれないが、あえて観るほどのもんでもない。まぁ登場人物たちと一緒に懐かしむ的なものかなと。