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パトリオット・デイのshihoのレビュー・感想・評価

パトリオット・デイ(2016年製作の映画)
4.2
約10年前のボストンマラソンの爆破テロ事件を描いた作品。

当時なんとなくニュースで見て、爆破事件の次の日かその次の日くらいには犯人が捕まって、なんか民家の庭に隠れてた…圧力鍋を使った爆弾でやたらメディアが作り方などを報道することを非難されていたなぁ…くらいの記憶しかなかった。

犯人は兄弟で、爆弾は2つ置かれて、別日に別の場所で警察官まで殺され、田舎町で激しい銃撃戦の後兄は死んで、逃げた弟は民家の庭にあったボートの中にいたんだけど捕まえるまでアメリカ国内がここまで非常事態だったとか、何も知らなかった。

観る前にネットでさらっと調べて、死者3名(この兄弟が殺したのは警官含めると4名)、怪我人が282人と見て「なんだ死んだ人少ないな、たいした爆弾じゃなかったんだ」と思っていた。でも実際の当日の市民や現場にいた様々な人の目線で見ると、酷いもんだった。

圧力鍋爆弾はリュックに入った状態で地面に置かれていたから、人々の足元で爆発した。現場は血の海で人々の悲鳴が響き続ける。爆弾は出来るだけたくさんを傷つけるよう作られていて、中に仕込まれた鍵やエアガンの弾、金属片などが人の体に刺さって肉や神経を抉ったのだ。
命を失ったのは小さな子供を含む3人、脚や腕がズタズタになり切らざるを得なかった人は沢山いる。事件や事故の報道を見ていても、つい「死ななかったんだ、よかった」と思ってしまう。しかし体を突然傷つけられ、それからの人生が変わってしまうことの被害の大きさは計り知れないと見て痛感した。勿論もっと高い位置で爆発させたら、もっと死者は増えただろうが、いずれにせよとてもとても酷い事だ。そこに家族や大切な人がいたら、もし自分がそんな目に遭ったら…と想像力を働かせることが大切だ。

何も分からないところから膨大なビデオ映像や写真を回収し、犯人と思われる人物を見つけ出したところは見事。
車を奪われて、おそらく後に殺される運命だったアジア人の彼の脱走は本当によく頑張ったと思う。彼が連絡を入れなければ、犯人達の身元さえ分からないまま、捕まらなかったかもしれない。

事件のあらましを知るにはよく出来ていてちょうどいい作品だと思う。が、アメリカという国の民衆の愛国心や地元愛から生み出されるパワーの強さを感じると同時に、なんとなく「こうあるべき」という同調圧力も強いんだろうなぁと感じる。一人一人が自己主張出来て素晴らしいと思う反面、綺麗でポジティブな事を言わないと市民権がないのでは?的な考えも浮かぶ。色んな民族が集まって出来ている国なので、攻撃への結束が強い。テロの危険も日本とは比べ物にならない頻度・規模である。大きくて複雑だからこそぎゅっとなりたがる、それがアメリカなんだなと思った。

ちなみに今作の後にNetflixで2023年製作のドキュメンタリー『アメリカン・マンハント』も観た。この映画で言うと主人公の警察官以外は全員実在の人物だったようだ。あっちも観ると、捜査にもかなり穴があったり、米国中が大混乱していた様子がわかる。もしかしたら政府の嘘なんじゃないかな?と思った部分もあった。

主演のマーク・ウォールバーグはいい役者さんだなと思った。精神的にボロボロになって帰ってきたシーンは奥さん含めてとても良かった。こんな夫婦関係理想だよね〜。

あと、許可出なかったのかもだけど亡くなった人周りの話も一つ入れて欲しかったね…。でも私が遺族でもそれを元に地元が結束しようと死んだ人は戻らないのだからUSA!みたいな映画に許可なんて出さんかな…。犯人捕まって良かったけど、身内の悲劇をダシに感動されてもね、と。

「アメリカでは犯罪者が基本銃装備してるから、町のおまわりさんレベルが捕まえようとすると命懸けになります」ということもよく分かった。
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