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ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズのkuuのレビュー・感想・評価

3.8
『ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』
原題Mishima: A Life in Four Chapters.
製作年1985年。上映時間120分。

三島由紀夫の生涯とその文学作品を題材にした※伝記風の芸術映画。
『美(beauty)』
『芸術(art)』
『行動(action)』
『文武両道(harmony of pen and sword)』
の4つのチャプター(4幕)から成る、日本と米国合作映画。

今作品は海外の友達に借りた一本で、しかも海外の人に日本人を題材にした作品を紹介してもらうのは変な感じ。
日本国産の逆輸入車に乗る感じ?
三島は車嫌いやし、愛用腕時計のオーデマピゲはスイス製やしなぁ。
物騒やけど割腹したとき実用的な時計をしていったというし、CITIZENの逆輸入腕時計をした感じ?(説明が長くて🙇)
さて、その物騒な割腹自殺で衝撃的な最期を遂げた三島由紀夫の生涯を、
事実とフィクションを織り交ぜて描いたのが今作品です。
外国人が三島の伝記映画を手がけたことに違和感を持つ方も多いと思いますが、脚本家たち(監督のポール・シュレイダーと彼の兄で三島と親交のあったレナード、その妻のチエコ・シュレイダー)は三島文学を深く理解し、事実関係も細かく調べあげている。
その上で、 彼の特異な人間像を多様な角度から浮き彫りにし、いまなお解明し得ない自死の謎に鋭く迫ってみせてます。
真実に迫るため、脚本家たちは、事件の起きた1970年11月25日の行動をドキュメンタリー風に描いたもの、幼少期からの出来事の回想(これのみモノクロ)、
そして『金閣寺』『鏡子の家』『奔馬(豊饒の海)第二部』を映像化したものの三部構成で三島の人生を描いている。
事件当日の記録に、回想場面とフィクションが随時挿入されるという構成でした。
すなわち、内容的にしたその三者によって、彼の人間像と自死へ至る心情や行動を明らかにするという形を採っている。
ほんで、観てる側は、彼が事件の何年も前からその準備を進めていたことや、さまざまな言動や表現でそれを予告していたこと、またその底に彼の性的趣向ともかかわりのある独自の美学と、エロスとタナトスを発現せずにはおかない内的衝動があったことを知る。
その性的趣向が事実であったかどうかは判然としないけど。
それを描いたことが問題視され、日本での上映がかなわなくなったとも聞きます。
しかし、タブーを恐れずに描いたことで、彼の行動の純粋さがより明瞭にな り、今作品自体が三島文学のような趣を持つことになったって云えるんじゃないかな。
内容だけでなく、三島役の緒形拳をはじめとする俳優陣の豪華さや石岡瑛子のデザインによる斬新なセット、再現された過去の出来事と三島事件のリアルさとか、見どころは数多くあると、思います。
またフィリップ・グラスによる荘重でありながら透明な音楽も巧く効果を上げていましたし、趣のある作品でした。

余談ながら作中尾形演じる三島の巻いてたハチマキの文字が七生報※国になってたが、実際は『國』の旧体漢字。
個人的には、演技云々抜きで、尾形より井浦新(ARATA)の三島が良いかなぁ。
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