カツマ

スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団のカツマのレビュー・感想・評価

3.9
もしディープ過ぎるオタクが映画監督になったなら。少年時代の趣味の世界も妄想もみんな具現化しようとするはずだ。そんな夢を叶えた男の名はエドガー・ライト。格闘ゲームとロールプレイングゲームを恋愛対戦シチュエーションになぞらえて、テレビゲームの世界をそのまま映像化する、という趣味の世界120%の映画を世に送り出してしまったのである。でも、いい、そこがいい。好き、という気持ちは映画を作る上で何より重要で、監督のカラーが見える映画ほど強烈なインパクトを残すものなのだから。

ということで今作の監督は『ベイビー・ドライバー』や『ショーンオブザデッド』を撮ったカルト映画の急先鋒、エドガー・ライトである。彼の作品は常に音楽やゲームの愛に溢れているが、今作は明らかにやり過ぎで、どうしてもこれをやりたかったんだ!という魂の叫びが聞こえてきそうだ。そんな今作だが、何と原作があるらしい。カナダのコメディコミック『スコット・ピルグリム』がそれであり、オタクの精神が万国共通であることを体感できる作品だ。

〜あらすじ〜

場所はカナダ、トロント。ロックバンド、セックス・ボブオムのベーシスト、スコット・ピルグリムは、女子高生ナイブスと付き合い始めてリア充の真っ只中。何の不自由もないはずの生活の中、彼は運命の人と出会ってしまう。彼女の名はラモーナ。桃色のヘアスタイルとクールな立ち姿で男たちを魅了するミステリアスな女性だ。もうラモーナのことしか考えられなくなったスコットは、アグレッシブにアタックを続け、見事デートにまで漕ぎ着け、地元のバンド大会に彼女を誘った。
大会当日、まだラモーナとナイブスの間で二股をかけていたスコットは、期せずして出会ってしまった二人の女性の一挙手一投足にヒヤヒヤする始末。そんな喧騒を遮るかのように謎の男がスコットに勝負を挑んできた!その男こそがラモーナの元カレ1号にして、邪悪な元カレ軍団の一番手だった!訳のわからないまま、スコットは刺客と戦うことになり・・。

〜見どころと感想〜

スコットが次々と襲いかかるラモーナの邪悪な元カレ軍団を倒していく、というシンプル過ぎるストーリー。いきなりストリートファイターさながらのバトルが展開されるので、超展開に付いていけないとそのまま置いてきぼりを食らうかもしれない(笑)アメコミっぽい文字の吹き出し、日本のテレビゲームの世界観にロックンロール魂を無理矢理ぶち込んだ闇鍋のような珍味であった。

配役にはまだキャプテンアメリカになる前のクリス・エヴァンスが、邪悪な元カレ軍団の一人として登場(笑)更にはブリー・ラーソン、アナ・ケンドリックと、まだまだブレイク前夜のスター俳優たちの初々しい演技を拝めるのも貴重な機会だ。何故か出てくる斉藤兄弟のモブ感にニヤケつつ、懐かしいキーラン・カルキンのオネェな演技が一番コメディっぽかったかもしれない。

音楽はレディオヘッドの第6のメンバーとも言われるナイジェル・ゴドリッチ。の割には音響系の音楽はサラッとしたもので、どうしてもゴリゴリのロックソングによる音圧バトルの方が印象に残ってしまった。アンプ対決でオーディエンスの耳は大丈夫か!?などと心配してしまうくらいには何でもあり。ストーリーの整合性とか、スコットが何故強いのか、などはひとまず置いておいて、テレビゲームの世界に迷い込んだかのような疑似体験に浸ってほしい作品でしたね。

〜あとがき〜

エドガーライト作品でも特にぶっ飛んでいるという今作をようやく鑑賞!完全に趣味の世界が炸裂していて、これはテレビゲームをやったことのない人にはキツイでしょうね(笑)

ストリートファイター、ドラクエ、スーパーマリオあたりの要素が分かりやすくて、敵がコインになるところなんてもろにドラクエですね。公開当初はあまりヒットしなかったそうですが、こういう作品が案外カルト映画として語り継がれたりするもので、個人的にはテレビゲーム好きとして存分に楽しめた作品でした。
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