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天使の処刑人 バイオレット&デイジーのkuuのレビュー・感想・評価

3.6
『天使の処刑人 バイオレット&デイジー』
原題 Violet & Daisy.
映倫区分 G.
製作年 2011年。上映時間 88分。
シアーシャ・ローナン(彼女が10代の殺し屋を演じたのは『Hanna』(2011年)とあわせて2作目かなもう。)とアレクシス・ブレーデル()が、ティーンエイジャーの殺し屋に扮したアクションコメディドラマ。
『プレシャス』でアカデミー脚本賞を受賞したジェフリー・フレッチャーが、オリジナル脚本で初監督を務めた。
よく考えたら、2013年の『わたしは生きていける』でも、シアーシャ・ローナンが演じたのはデイジーやった🌼

ニューヨークでお手軽な仕事だけを請け負う殺し屋のバイオレットとデイジーは、あこがれの新作ドレス欲しさに、ある仕事を引き受ける。
それは、自ら電話をかけ殺してほしいと頼んできた男を殺すだけの、ごく簡単な仕事のはずだった。
しかし、男は別の殺し屋にも狙われており、2人は思わぬ事態に巻き込まれていく。。。

今作品は意外に驚いた。
暴力的で、バカバカしくて、楽しくて、でも思慮深くて、心に響く。
青春映画のような雰囲気を持ちながら、おとぎ話のようなファンタジー的な要素もあり、他人や同時進行する出来事など、外部の力を現実的に示すことなく物語が進行していく作品でした。
今作品は、すぐに奇妙な遊び心に満ちたトーンに展開していく。
最初のシーンで血の海が広がっても、主人公たちは下品で子供じみた冗談を云い合っている。
ヴァイオレットとデイジーは、ほんのわずかな表面的な部分、わずかな純真さ、そして率直で軽快なティーンエイジャーの気質を示している。
特に、ダニー・トレホが合いの手を入れるシーンはこれまた意外に楽しい。
次の彼女たちの仕事が決まってからも、このトーンは変わらず、2人の若さゆえの気まぐれと好奇心が、物語に独特な展開をもたらす。
ジェームズ・ガンドルフィーニが、この名もなき男を、哀愁を漂わせながらも、存在感と優しさを持って演じている。
ほんと、瞳の奥になんとも云えない感情がみえた。
ヴァイオレットとデイジーは不意を突かれ、殺しのために送り込まれた人物と変幻自在の出会いを果たす。
それはまた、今作品が少し方向性を見失うところでもあるのは確かで、明らかにガンドルフィーニのキャラを中心に物語が進むのに、あらゆる要素が混ざり合った独特の複雑なトーンは、88分という映画の時間がまだ数分多いかのように、少しやりすぎになってしまってた。
決して悪くはないのだが、しかし、少しやりすぎの感も否めない。
今作品は必ずしも完璧ではないが、それ以外の注意点はすぐに思い浮かぶ。
それ以外は、とにかく台詞は面白いし、キャラもよく描けてるかな。
ヴァイオレットはデイジーの無邪気さに比べ、明らかに硬派なところがあるけど、主人公たちの精神や性格はおおむねよく似てる。
この2人をアレクシス・ブレデルとシアーシャ・ローナンがそれぞれ見事に演じており、2人は善きパートナーとして画面上で巧みな化学反応を起こしていました。
さらに、脚本がぶつけたいさまざまなムードを、シャープな脚本と巧みな映像で、実に巧みに表現していました。
脚本・監督のジェフリー・フレッチャーは、この長編にかなりの労力を費やしたに違いないけど、それが見事に報われたと思います。
アングルや照明など、カメラワークにもこだわりがあり、目を引くショットを数多く撮影していました。
あらゆる意味で、とても楽しい作品でした。
今作品は公開時にあまり評判がよくなかったようですが、しかし、個人的には、監督はそれ自体の長所として十分に意味のあるユニークな長編を作り上げたと思います。
純粋にオリジナルなコンテンツを求める視聴者には物足りなさを感じるかもしれないが、個人的にはとても気に入った作品でした。
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