Hiiiraiii

her/世界でひとつの彼女のHiiiraiiiのネタバレレビュー・内容・結末

her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

2014.7.10 シネマライズ

奇しくも同時期公開の『トランセンデンス』と同じ人工知能を題材にしながら人間の心を深く考えて作られた映画である。ひねりの効いた恋愛映画と思っていたが哲学的要素が会話に盛り込まれ前妻キャサリンとの離婚で傷ついた主人公セオドアと日々アップグレードするOSサマンサの成長する姿と更新する感情に人間の心の豊かさを見る。

いかに生活を豊かにする技術が飛躍的に発展しようと人間の心というものは飛躍的な進化はしない。縄文時代と現在での人を思う気持ちはさほど変わらないように。(たぶん)

SNSを介した恋愛話というのはすでに多く聞くし実態のないOSに恋心を抱く事はもはやなんら不思議でもないこの世の中。相手側の対象が変わるだけであり恋そのものをするのは人間なのは変わりない。その豊かな感情を抱ける心の構造は未だ科学的にも明らかにできないほど可能性に満ちている。その素晴らしき部分にスポットをあてセオドアがOSのサマンサを通して成長する心にグッときた。

彼が映画の最後で書く手紙の内容は普段我々が意識しない事でありながら誰にでもあてはまる事であり、その気持の変化をしっかりと掴み提示するスパイク・ジョーンズという監督は目に見えない心をテーマに映画を作っているのだと感じた。

「キャサリン(前妻)、君に謝りたい。互いに傷つき合い、責めてしまった。ことばを強要してすまなかった。1つだけ伝えたい、僕の心には君がいる。君がどこに行こうが、愛を送ろう」

想いは人の心に住める。OSのサマンサに教えられた感情を知ったセオドアは新しいスタートラインに立った。決してハッピーエンドではないけれど深く心に染み渡る映画でありましたよ。
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