ーcoyolyー

her/世界でひとつの彼女のーcoyolyーのレビュー・感想・評価

her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)
3.7
コロナの時代の愛はこれでいいよね。かつて淡路恵子が言ってた「ドラクエは裏切らない」を進化させるとこうなるよね。私も男に酷く傷つけられるのもう嫌だからこれでいい。

こういうのミシェル・ゴンドリーとか(500)日のサマー撮った人みたいなのにやらせると目も当てられなくなるんだけどスパイク・ジョーンズが撮るとだいぶ好感持てるよね。

ルーニー・マーラが「キャロル」とは違ってここではちゃんと魅力的に描かれていて安心した。あれやっぱルーニー・マーラのせいじゃない。そしてルーニー・マーラが男から私がいただきがちなラストワードと全く同じものぶん投げられてて苦笑した。最後に送られてきたロミオメールとか絶対まともに読まない笑(でも何らかのトラブルの時に必要になるかもしれないから一応保存だけはする)

この映画でのホアキン・フェニックスがまだ見てられるのって、OSに自分に都合の良い女だけを投影して鼻の下伸ばしてても、元妻に釘刺されてるシーンを見せつけられてるからで、これミシェル・ゴンドリーはやらないので、スパイク・ジョーンズがああいう自己言及入れるのはまだ気が利いてるというか一応羞恥心は持ってるんだなと伝わってきますね。

せっかくスカヨハ様起用してるのに一瞬たりとも姿を出さないの貧乏性の対極で豪奢だなあと感心してたんですけど、エンドロール見てる間に気づいた。

これ「ロスト・イン・トランスレーション」への元夫からのアンサー映画だな!!!!!

元妻ソフィア・コッポラへのエアリプだし、「her」も(機械と生身の人間の)翻訳の狭間で失われたものの話になってる!!!!!

だからサマンサは絶対に「ロスト・イン・トランスレーション」のソフィアを投影した主人公を演じたスカーレット・ヨハンソンじゃなきゃダメだったんだよ…スカヨハ使って元夫婦エアリプ合戦してるよ…スカヨハ様大変…「ロスト・イン・トランスレーション」と「her」合わせて見てると答え合わせが大変に捗る。ああいうスパイクに愛想尽かしたソフィア、あんなソフィアに振られて「女怖え…」と思いつつ少し自分を見つめ直したスパイク。両方大体キャラ合致してると思う、作品を通してロミオメール送ってくるとかキモいけど(そしてそのキモさにも自覚的で、ちゃんと登場人物に言わせてるところは少し誠実)(だがこういう可愛げに胡座かくからお前見切られたんだぞ)

そして監督自身とソフィアの関係を投影しただろう離婚カップル役のホアキン・フェニックスとルーニー・マーラが私生活でカップルになりましたってのもなかなかのオチですよね。なんかみんなもう幸せになれ。ホアキンはお兄さんの分も、お兄さんと一緒に幸せになれ。なれる。

(500)日のサマーと違ってこういうところで元妻を貶めず、自分のダメなところをちゃんと描く品性の持ち主であることがわかって、逆説的にこの人のこういうところがモテるんだな、というのもわかるので、スパイクも幸せになってね。自分が悪かったです、と認められる人なのだからなれる。
ーcoyolyー

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