7BOX [セブンボックス]のSameのレビュー・感想・評価

かなり珍しいパラグアイ映画。
映像産業後進国のはずですが、まともすぎるほどちゃんと作られていてなおかつ面白い！これは掘り出し物の一本ですね。

主人公ビクトルは市場で日銭を稼ぐ貧しい少年。手押し車で買い物客の荷物を運んで小銭を稼いでいます。彼は映像の世界に強い憧れがあり、映像を撮りたい、映像作品の中の主人公になりたいという願望があります。そのため映像を撮ることのできる携帯電話がほしくてたまりませんが、映像撮影可能な携帯電話は高価すぎて彼の収入では購入する事が出来ません。
そんな折、かなり怪しい依頼が彼の元に舞い込みます。肉屋から運び出された７つの箱を言われるがままに運べば100ドルもらえることに。箱の中身が何かを確認せずビクトルは箱を運ぶことにします。
しかしこの箱はとても危険なシロモノだったのです。

巨大で迷路のようなアスンシオン市場を舞台に、７つの箱をめぐる様々な人間の思惑が絡み合い、ビクトルの逃走劇が繰り広げられます。
パラグアイの底辺の貧しさや、人間関係のリアルさ、ごく少額の金銭を巡って奪われる命の価値など、パラグアイが抱えるであろう問題をシリアスに紹介しつつ、監督の作風はどこか軽やかで時にコミカルでとても見やすい。

同じところでぐるぐるしてたり、登場人物が知り合い同士ばっかりという都合の良さも感じましたけど、パラグアイ映画の希少性や、想像以上にドラマ性が高いこともあってかなりの良作ですね。

監督さんも長編デビュー作で、出演者も演技経験のない人が多いらしいのですが、全くそんな感じに見えません。