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大怪獣のあとしまつのSameのレビュー・感想・評価

大怪獣のあとしまつ(2022年製作の映画)
1.5
巷では令和のデビルマンとの呼び声の高いこの作品、やっぱ見たくなっちゃいますよね。
絶対映画館で見たくなかったので、アマプラに来てたタイミングで鑑賞。
鑑賞してみた結果、皆さんがおっしゃることがよくわかりました。
なんというか、こりゃダメだ笑

ネタバレして書いてますのでご注意を。




『パシフィック・リム』にもそういうシーンが出てきますけど、怪獣の死骸をどうするか、を現実的に考えたらものすごく大変だよね?っていうアイデアで、これまでみんなが考えたことあるけど一本の映画にしたことはないなって題材で面白そうだと思ったんですけどね。時期的にも『シン・ゴジラ』の後で『シン・ウルトラマン』の直前というベストなタイミング。なのに何も生かしきれず駄作を生んだという笑

B級映画として笑えるダメさじゃなくて、本当に全てがスベリ倒してます。
三木聡監督は『時効警察』の人なんですよね。だからそもそもこういう脱力系でスベリ芸な作風なんだろうけど、それにしても酷い。
この映画で監督が何がしたいのかはよくわかりました。昨今の日本の政治や情勢をかなりキツめに皮肉ってるんですよね。
西田敏行扮する首相をはじめとした閣僚たちの会議のシーンが撮りたい部分なんでしょう。臭いがうんこかゲロかを日本のトップが一生懸命考えたり、わざわざ専門家を集めて怪獣に「希望」なんて名前を公式につけたり、その辺の政治家への皮肉りかたは好きでしたよ。隣国の対応も結構キツめにおちょくってたり、まあその辺はわかるんですよ。
キツめにおちょくってる割には全体的にチープな視点だなあとは思いますけど。

ただ、クソしょうもなくて意味のわからない比喩を連発したり、クソしょうもないキノコのくだりの笑えなくて下品な発言が、見てるうちに疲れてくるというか、こんなに製作陣が面白いと思って演出したであろうシーンやセリフが、ことごとくハマらなくてスベリ倒すなんてことあるんだなとため息が出ました。笑えない方のダメさ加減、これが皆さんが酷評してるところなんだなと納得。
なんか小馬鹿にされ続けてるような感覚。
純粋に映画としてつまんないんですよ。

もう一つの現場のパートは山田涼介を主役に配して、特撮怪獣映画のお約束をバチっと決めなきゃならないところですよね。ここもマズい。
監督が特撮怪獣映画に愛のかけらも無いので、ゴジラやウルトラマンの細々としたお約束が描けてないんですよ。何も描けてないのに悪ふざけだけするから、こっちのパートでもダダスベリ笑
『パシフィック・リム』を見習ってください。あのクオリティとは言わないけど、アラタたちが特撮ヒーローのキャラクターのように、正義を信じて熱くかっこよく、上から降りてくるくだらない作戦を命懸けでこなすところが描けたら、閣僚たちのくだらない会議の面白さ、そんなものに現場や国民が振り回される滑稽さが描けるのでは?
あと、山田涼介の部下で椿鬼奴似の演技がド下手な人は誰だと思ったら、浅野忠信とCHARAの娘なんですね。まだ演技もままならない親の七光りの素人をこんなところに捩じ込むんじゃないよ。演技が棒すぎて逆に目立っちゃってましたよ。

中心となるキャラクターたちの浮気キスがやたら出てくるのも意味がわからないですし、AKIRAのみやこ様とか、オマージュ?なのかなんなのか知らんけどこういうのもことごとくすべってるのは逆にすごい。
コメディって空気を読むセンスだと思うんですよね。『時効警察』のころは時代にハマってたと思うし、まだあのゆるい感じが笑えたんですけど、三木聡さん、令和の今、あなたは全く空気の読めない爺さんになってしまったのかもですよ?すべってることにクスッともこない、ため息も出ないつまらなさ。
いや、これ三木聡監督のせいじゃないのかもな。この人はどれだけ予算と豪華キャストを与えられても自分流の脱力コメディを撮るつもりしかなかったってことですよね。逆に予算もらってみんなを裏切るようなバカをやってやろうくらいに思ってたかもしれない。
大怪獣「希望」は日本が現在抱えてるコロナ、原発、近隣諸国との軋轢などの様々な問題のメタファーでしかなくて怪獣ものやるつもりなんて1ミリも無いんですよね。
その問題のメタファーに希望なんてつけるあたりがもう小馬鹿にした視点でしかない。

そして問題のラスト、アラタが光の巨人となり、それまでのわちゃわちゃを無に帰させるやり方で締めます。これぞデウスエクス・マキナ。ちゃんと序盤からこのラストは匂わされてますからこうなる事は想像できました。
ここは「おい!それできるなら最初から変身しとかんかい!」ってツッコミ待ちの壮大なボケなんでしょ?激烈に寒くて、鬼スベリ演出の集大成として正しい終わり方でした。

まあ、この終わり方を取ることによって、途中のシニカルな社会風刺っぽいおちょくりに対して監督自らは何にも方向性を示さないし、希望も示さないし、なんなら大枠として借りてきた特撮怪獣映画、特撮ヒーローすらバカにして終わるという、最低の終わり方をしたと受け取りました。
途中からこの終わりが透けて見えてたので驚きはなかったですけど。

Filmarksの最低点1点は、やはり極点なのである意味愛を持ってつける点数なんですよ。
今後語り継ぐべきクソ映画に1を与えるべきで、ただつまらない映画には与えられないのです。
Same

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