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何食わぬ顔のwigglingのレビュー・感想・評価

何食わぬ顔(2003年製作の映画)
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特集上映ハッピー・ハマグチ・アワーにて久々の再鑑賞。long ver.の方。

濱口監督が映研時代に撮った8ミリ作品にしてデビュー作。なので技術的な稚拙さはあるものの、この時点で現在の濱口竜介につながる作家性は見て取れます。
それ自体すごいことだし、学生映画とは思えないほど面白い。

映画の製作過程をめぐる物語という意味では、『親密さ』に近いかな。short/longの2バージョンがあるのも同じ。
彼の作品には劇中劇を描く作品が多いんだけど、本作もそうで、学生映画製作の周辺を描いた学生映画というマトリョーシカ状態。

本作でも人と人とが理解しあい繋がることの困難さが描かれます。みんな見事なまでに想いを遂げることができず、肩をがっくりと落としつつも何食わぬ顔でやり過ごす。

特に見ものなのが、若き日の濱口監督が演じる男子。映画作りを仕切る役回りのジャイアン的キャラなんだけど(ルックス的にもね笑)、映画の中で演じる性格も全く同じなんだよね。始終強気なのに失敗ばかりしてる痛い奴。何度観ても彼が可笑しすぎて。
『ハッピーアワー』で久しぶりに役者として出演してて、本作のこともありハラハラニヤニヤしながら観たのを思い出します。

大井競馬場を舞台に選ぶセンスも並外れてるし、サッカーで始まりサッカーで終わるという円環構造も素人とは思えませんね。
後に相棒になる岡本英之も実にイイ顔で登場し、美味しい役柄を演じてたり。
天才濱口竜介のルーツを探るには避けて通れない作品です。

そうそう、short ver.はlong ver.の映画の部分を切り出したものと言われていますが、正確には違います。競馬場のシーンが夜と昼で違ってるんですね。longの方だったかな、撮影し直したんだそうです。
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