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ツィゴイネルワイゼンのwigglingのレビュー・感想・評価

ツィゴイネルワイゼン(1980年製作の映画)
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若い頃の自分に映画の観方を教えてくれた作品のひとつです。"Don't Think! Feel"的な。
でもいま観ると、それほど難解な内容ではないなとも。

今回はYCAMシネマの藤田敏八の特集上映で、監督作だけではなく俳優として出演した本作もラインナップされていました。昔観たときは彼のことは知らなかったんだけど。
主演・原田芳雄の野性味と強烈な存在感とは対照的に、物静かながら男の色気が漂う藤田敏八の不思議な個性も印象的。なにより作品がもつ昭和初期の香りとの相性が素晴らしい。

その二人と妻たちの奇妙な関係はまるで夫婦スワッピングを思わせる。特に、目に入ったゴミを舌で舐めて取るねっとりしたシーンがゾクゾクするほどエロチック。
ケダモノのような原田と理性的な藤田の対決のようでもあり、お互いを補完し合う二人で一人のような関係でもある。

彼らと並行して描かれる盲目の旅芸人の三角関係も混乱を極め、互いに呼応しあい競い合うように深みに落ちてゆく。

原田が演じる男は旅芸人を追う途中で奇妙な死を遂げるのだが、それ以降のすべての展開は死者から生者にあてた声を描いているんですね。

そこでタイトルのツィゴイネルワイゼン、これは原田が所有するサラサーティ自らの演奏を録音したレコードのこと。このレコードは作曲者サラサーティ本人の声が入っているレアな代物です。
つまりそれは死者の声が記録されているレコードであり、死者からのメッセージを伝える媒体であると。

そして死んだ原田は娘を媒介に、藤田に早くこっちへ来いと誘い続けるんですね。
此方(こちら)と彼方(あちら)の関係性を描いた作品であると解釈しました。

鈴木清順の官能美と死の香り満ちた本作は1980年のキネ旬ベストテンで1位に輝いたわけですが、とても時代性を感じますね。ちょうどバブル前夜の頃ですが、こういう奇天烈な作品が評価される余裕がある時代だったんだなぁと。
その後の、東京のミニシアター全盛期に青春時代を過ごした自分は思わず遠い目に...。
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