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ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジのwigglingのレビュー・感想・評価

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死者と生者が同じ世界に棲んでる映画、いまブームなんですかね。『岸辺の旅』とか『母と暮せば』とか。

本作もそんな映画なんだけど、タイトルの通り死者の世界と生者の世界が入れ子になってて、両者の境界は曖昧。
そして油断すると死者の側に取り込まれてしまいそうなんだけど、みんな昼間から冷えたピザをツマミにビールを飲み軽く酩酊している。ルールを守って適切に対処すれば危険はないらしい。
そんな緊張と弛緩がなんとも心地良い。

ツアー中にその街に取り残されたバンドマン中西(田中淳一郎)が、街のボス的な古賀(鈴木卓爾)に住処を与えられ仕事を手伝うようになる。その仕事とは、街のそばにある川から出てくるものたちを追い返すこと。その川にまつわる力の管理が彼らの仕事なのだ。中西はそんな不思議な街に魅了され特別な感情を抱くようになる。

もしアピチャッポン監督が東京人だったらこういう作品を撮るのかもと思いましたね。彼もこの世とあの世を混ぜこぜにする達人であり、アンビエンスに重心を置く作風にも共通点を感じた。

そして、『ジョギング渡り鳥』に通底するものがあるなぁと。鈴木卓爾が出てるからではなく、世界を見つめる眼差しが同質なんだと思います。そこにいないはずものを見てしまう特別な眼差し。

柴田千紘をはじめ女優陣がなんとも魅力的。一筋縄ではいかない感じをうまく体現してて。
そして、田中淳一郎ことのっぽのグーニーが手掛けるサウンドトラックも秀逸。実験くんとポップが同居するそれは映画の空気と絶妙にマッチしている。

黒川幸則監督って本作で初めて観たけど、大した才人だと思いましたね。他の人のレビューではゴダールが引き合いに出されたりしてて、それもよくわかる。
次作も早めにお願いしたいところ。
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