とりん

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌のとりんのレビュー・感想・評価

3.9
2023年16本目

フォーク全盛期のNYを舞台に、以前はマイク&ルーウィンとして人気だったルーウィンがソロ活動をしているものの、全然儲かることはなく、自分の家を持つこともできずに友人宅を転々としながら過ごしていた。そんな彼のある1週間程度を綴った作品。
特に山場もなく彼の何気ない日々が少しユーモアに時折少しだけシリアスな雰囲気も入れつつ、ただ描かれているだけである。でもこういう雰囲気の作品はすごく好み。
オスカー・アイザックが好演している。アコギを弾き語りする時も彼自身が演じているようで、歌声もすごく良い。もちろん曲も素敵だ。フォークソングってやっぱ良いなって改めて思わされた。
今ってカントリーの根強い人気はあるものの、以前のような勢いはないはずで、全盛期だとバーとかでもこんなに人入ったりするもんなんだなぁと思ったりする。まぁ今も自分が知らないだけでそうかもしれないけれど。
周りからろくでなしだなって思われてるし、自分もダメ人間だって気づいてはいるものの、それを周りのせいにしていたり、適当な行き当たりばったりな行動をするばかりに空回りしてしまうことも多々ある。でもそんな彼が憎めなくて、少し応援してしまう自分がいる。かけがえのない相棒であったマイクを失い、自分だけの歌も求められていないことに気づき、こんな鳴かず飛ばずな生活にも疲れてギターを置こうとするときもあるけれど、結局それすらも上手く好転しようとはせず、また元の繰り返し。最後の流れで彼らずっと同じような生活を繰り返していくんだろうなというのが伺える。
キャリー・マリガンの演技も良かった。そこまで出番が多くはないけれど、ルーウィンが相当クズだったんだろう、とにかく彼に対してに当たりがめちゃくちゃ強いし、かなり口が悪い。「プロミキシング・ヤング・ウーマン」でもなかなかだが、あの一部の口の悪さだけなら本作の方が上かも。あの時のルーウィンとのやり取りも面白いテンポ感で思わずクセになりそう。黒髪セミロングなのも新鮮だし、若かりし姿を久々観た。
他にもジャスティン・ティンバーレイクやアダム・ドライバー、ギャレッド・ヘドランドなど今では知られてる俳優たちの若かりし姿を観れるのも良い。
猫がもっと描かれると思っていたが、期待していたほどだったのは少し残念。
とりん

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