ましゅー

ノスタルジアのましゅーのレビュー・感想・評価

ノスタルジア(1983年製作の映画)
3.7
このGW中はこれまで溜まっていたリストを出来る限り消化したい、と思っていたものの一昨晩は寝落ち。(やはり深夜鑑賞の翌日早起きすると寝不足が堪えます…)

なんという不甲斐なさ。これは身を引き締め直さねばなりません。
.
そんな私にうってつけの映画が、またしても @ GYAO で無料配信されているではありませんか…❗(GYAO!…観たいものがない時は本当に、圧倒的にないのに、気を抜いたらこんなお宝がひっそりと埋まっている。GYAO!…侮れん、GYAO❗)
.
「映画好き」を名乗るからには一度はくぐり抜けなければならない(…と勝手に思い込んでいる😅)、まるで聳え立つ城門。

そう。あの旧ソ連の名匠 #アンドレイタルコフスキー の作品。本当は彼の置かれた立場・心情までをも理解するために、時系列を追って観たいところではありますが、この千載一遇のチャンス。逃すわけには参りません。
.
映画好きを自認し、いつか観なければ…❗との想いをぴあシネマクラブなどを繰りながらも、目の前の娯楽色の強い作品ばかりに気をとられ続けて早ウン十年。ここに来てようやくの初タルコフスキー、覚悟をもって臨みます。
.
.
.
…………これは………

何と言ったらいいのでしょう?

ものすごく崇高な、かと言って人智を超えた超越的な存在と言うより、極めて私的な、人間臭い想いは伝わってきます。
.
のっけからモノクロの雰囲気のある映像、そして物憂げ・悲しげな唄と共に流れるオープニングロール。現実とも空想ともつかないこの圧倒的な「場づくり」にもう心は鷲掴みされます。
.
うって変わって、でもトーンの抑えられたカラー映像に切り替わり、主要人物と思われる女性・男性のこれまた抑揚の抑えられたやり取り。派手なBGMなど何もなく、言葉も少なめですが大いに惹き付けられます。
.
現実であるカラー映像と、(恐らく)回想か空想・妄想か、モノクロ映像とが入り交じった時系列を交錯させた構成。
.
キューブリックや先日観たウェス・アンダーソンのようにこだわり抜かれたほぼ完全シンメトリーの画ではないですが、引きの画を多用した美しい空間描写。
.
またそこからの超スローズームイン、もしくは逆にズームアウト。さらにはドリーでの横移動。じっくりたっぷりかなりの長回しカットでゆったり魅せてくれます。
.
数々の記事や考察に記されたように(さほど読み込んでいるわけではありませんが)「火」「鏡」などを含むカットが象徴的に配され、とりわけ「水」の画が、水滴の音・雨音・水溜まりに足を踏み入れる音 等と共に表れると、荒んだ心が浄化されるような心持ちに自然とさせてくれます。
.
宗教的な背景や、監督自身の亡命経験から来る「郷愁」のようなものが、後からささっと読んだ記事や個人的考察からは感じ取れるものの、正直100%理解するにはこの一作では不可能とは思いました。
.
なるも、芸術的なセンスが壊滅的な私でさえ、まるで壮大な詩集・巨大な壁面に描かれた宗教画を読んだり・見たりしているような、そんな荘厳な気持ちにさせてくれたのを発見できたのは、やっぱり気持ちの滾る若かりし頃ではなく、今だからこそとも思うのです。
.
正直途中で寝てしまうことが心配でしたが、全くそんな事はありませんでした。

うん。観て良かったです😌
.
(以下あらすじ:Yahoo!映画より転載)

ロシアの詩人アンドレイは、通訳のエウジェニアを連れてモスクワからイタリア・トスカーナ地方の田園にやって来る。2人は18世紀のロシアの音楽家パヴェル・サスノフスキーの足跡を追って旅を続けてきた。だが、アンドレイが不治の病に冒されたことで、その旅も終わりを告げようとしている。

ある朝、アンドレイは周囲から狂人扱いされているドメニコという男と出会った。やがてドメニコはアンドレイに“ロウソクの火を消さずに広場を渡る”という、自分が成し得なかった願いを託す。それが“世界の救済”に結びつくと言うのだが…。
ましゅー

ましゅー