ーcoyolyー

ブルージャスミンのーcoyolyーのレビュー・感想・評価

ブルージャスミン(2013年製作の映画)
3.8
壊れゆく女をこんなにスタイリッシュに軽妙洒脱に描けるウディ・アレンの作家性に脱帽。これ客観的な視点から見るとめちゃくちゃ怖いんだけど、巻き込まれて狂わないような距離を取りつつジャスミンに寄り添うように撮ると、彼女に世界はこう見えてるって話よね。壊れ方の描き方抑制効いてて、でもおかしいのはおかしいもんね、ラストシーンからそのまま強制入院なんて目に浮かぶわけでさ。それでも誇り高き貴婦人に寄り添いましたって「ヨコハマメリー」と実は構図が似てる。というか彼女が姿を消した後、その彼女と関わりがあった人々の証言集めたのが「ヨコハマメリー」。ラストシーンの後ジャスミン放置されたらそのままメリーさんになるんだよね…それはそこはかとなく伝わってきたから(この人詐欺師じゃないんだ!?と驚きつつ)その外交官押さえろ!離すな!って思ったもんね…ジャスミンの居心地の悪さ若干他人事じゃなくわかるもんね田舎に馴染めなかった人間としては…私の場合は田舎帰ってもマイルドヤンキーに囲まれるだけで話が合わないからそれで病むのは手に取るようにわかるんだよね…そしてそれは私なんだけどジャスミンの夫依存は私の母を見ているようでそこもしんどい、あそこで離婚調停でがっぽり金取ってから電話すりゃいいのにそれができないところでもう既に病んでるよな、こうなる兆候なんだよなって…あの電話をする直前までは自分に都合の悪いことからああやって具合悪がって逃げる母を見てきたから、ああ私「お母さんはいつもそう、私と向き合えなかったよね」と言ってやりたくなって…あの息子はああ言えて突き放せて偉いな、私は付かず離れずで死ぬのを待ってるだけだもんなかっこいいなって…

ウディ・アレンの描く現代の都会人の病理、こんなに私突き刺さる人生にいつの間にか仕上がってて、苦しいけどちょっと嬉しい。全くセレブじゃなくて多分サンフランシスコの妹周辺のアメリカンマイルドヤンキー(語義的に色々矛盾孕んでるけど)より貧民だけども、「(生産性のない)高等遊民」って馬鹿にされがちなポジションで20年以上フラついてたら、田舎に帰ってこいとすら言われなくなる存在になったのは心持ちホッとしている。あんなところで暮らすのとことんもう無理だ…でも一歩間違えたらこの映画のケイト・ブランシェットになっちゃうんだろうな…もうそのスリル楽しむしかないんだよな…
ーcoyolyー

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