鍋レモン

それでも夜は明けるの鍋レモンのレビュー・感想・評価

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
3.4
⚪概要とあらすじ
奴隷制度がはびこっていたアメリカを舞台に、自由の身でありながら拉致され、南部の綿花農園で12年間も奴隷生活を強いられた黒人男性の実話を映画化した伝記ドラマ。

1841年、奴隷制廃止以前のニューヨーク、家族と一緒に幸せに暮らしていた黒人音楽家ソロモン(キウェテル・イジョフォー)は、ある日突然拉致され、奴隷として南部の綿花農園に売られてしまう。狂信的な選民主義者エップス(マイケル・ファスベンダー)ら白人たちの非道な仕打ちに虐げられながらも、彼は自身の尊厳を守り続ける...。

⚪キャッチコピーとセリフ
“あきらめない”

「これは事実に基づく物語である」

⚪感想
事実に基づいた奴隷制度があった頃の作品。
この時代はそれが当たり前であったことを嫌という程突きつけてくる。

今のアメリカの現状と重なってより考えさせられた。

ニガーという言葉の意味や使われ方を知ったのも映画だったけど今回は自由黒人という法的に奴隷ではない黒人の人々を指す言葉とその存在を初めて知った。

悪い意味で神様は万能だと思った。
自殺や人殺しに繋がったってそれが神の御恵みだと信じれば正当化されてしまうし、自分の身に悪いことが起き、神からの罰だとしてもその罪の原因を他のものに擦り付け立証できるから。

原題は『12 Years a Slave(12年間、奴隷)』だけど邦題の方が好き。
『それでも夜は明ける』というタイトルは希望にも絶望ともとれると思うから。
私には絶望に感じた。どこかの誰かが傷ついていても死にたくなっても解決されなくてもそれでも夜は明ける残酷さを突きつけてる気がする。

登場人物の演技力が凄くてポール・ダノやマイケル・ファスベンダーは苦手になってしまいそう。

ベネディクト・カンバーバッチ演じる材木商のウィリアム・フォード。
ウィリアムは他の人と比べたら温和だったし良心もあったのかなと。
ベネディクト・カンバーバッチはその映画の雰囲気を出すのが上手いというか登場するだけで空気が変わる。『イミテーションゲーム』も凄く良かったし。

ポール・ダノ演じる農園の監督ジョン・ティビッツ。
ジョンの行動は単なる妬みと八つ当たりだから観ている方は本当に嫌な気分になる。
『プリズナーズ』や『スイス・アーミー・マン』とはまた違った役どころで。

マイケル・ファスベンダー演じる別の農園の支配人エドウィン・エップス。
気分が良い時と悪い時の差が怖い。それに加え妻との関係が周囲に悪い影響を与える。
彼の罪悪感や手をくだすことには抵抗があると思っている根の部分を少し感じるから複雑。

ブラッド・ピット演じるカナダ人で大工のサミュエル・バス。
今作の中で1番好きな登場人物だった。
奴隷制度に反対しているという以前に自分の考えを持っていてそれを紡ぐことができるのがかっこよかった。
ただ善を吐くのではじゃなくて、「自分がかわいい」からとそういった部分を隠さず言うことが出来る彼がかっこよかった。

キウェテル・イジョフォー演じるソロモン、プラット。
所々で流れる汗。表情が自然でめちゃくちゃ胸が締め付けられた。
『キンキーブーツ』でローラを演じた方と知ってびっくり。

奴隷、家畜、所有物。ヒトではなくモノ。
同じ人間。肌の色が違うだけ。

平和や共生とはなんなのか。
受け入れて過ごす先?理解して過ごす先?我慢して過ごす先?

黒人って言う言葉って不必要なラベリングだったりするのかな。
よく日本人はアジア人ってまとめられるけど同じアジア人の中国や韓国の人とは言葉も文化も違うし、黒人の方だってルーツはバラバラでは。

黒人の方=犯罪者の確率が高いみたいなステレオタイプって結構根強いと思う。
私自身竹下通りで黒人の方に腕を引っ張られてから普段の生活の中で路地とかに黒人の方がたむろしてたりすると怖いなと勝手に思っていたりしてしまうし。
逆に映画の中の黒人の方=ギャグ要因だったり、犯人役って言うものが多い気がする。最近は『ブラックパンサー』とかあっていいなって思った。

日本人で黄色人種という中で人種差別をどうやって考えてたらいいのか私は未だに分からない。

今のアメリカで警察に向かっていく黒人の少年を白人の少女が目の前に立って守ってあげる動画が衝撃的だった。
差別を逆に利用して身を守ってあげる方法に変えられるって凄いなって。



⚪以下ネタバレ



プラットが首を吊られそうになっていても誰も助けられないし、子供たちは無邪気に外で遊んでいたり、雇い主の奥さんは哀れそうに見ているだけ。
同じ仲間たちが助けたら自分に被害が来ることは明らかだ。

パッツィーを代表として奴隷となった女性の多くは性的被害も多かったんだろうって思う。雇い主からそうした被害を受け妊娠して子供を産んでも、雇い主の奥さんは気に食わなくて暴力に合うなんてざらにあったんだろうな。
言い方は悪いが差別の対象であっても性の道具としては使える彼らの感覚が分からない。

字幕でその後のソロモンは伝記本を出版して奴隷解放運動にも携わったりとされていたけど、亡くなった年や場所が不明なのはどういう事なのか。
少し古いことだから分からないということなのか、裏があるのか。

⚪鑑賞
映画天国で鑑賞(字幕)
鍋レモン

鍋レモン