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オール・ユー・ニード・イズ・キルのymdのレビュー・感想・評価

3.3
死んで同じ地点からリスタートするというアイデアは『ミッション:8ミニッツ』と同じだけど、あちらはタイムループしながら手探りで真相解明をしていくサスペンスとして出色の名作だったのに対して、こちらはあくまでも戦争に勝つ為に死を繰り返すという、アクションゲーム的な意匠になっている。

日本のSF小説が原作のようだけど、それをそう感じさせないダイナミズムが漲っていてハリウッド化は成功していると感じたな。日本映画でやろうとするといろんな意味できっと火力不足だったろう。

ニール・ブロンガンプを彷彿とさせるような絶妙なアナログ感を出した近未来設定も個人的にグッとくるポイントで、気持ち悪いエイリアン造形も含めてヴィジュアルはとても好みの映画だった。

こういったタイムループモノって複雑になりがちなんだけど、目的までが一本道なので驚くくらい明快。2時間以内に収まっているのも無駄を省いてテンポ重視にしているからだけど、それも良い判断だろう。

ただし、面白いとは思うものの、タイムループが映画として機能的だったかどうかは少し疑問が残る。先述の『ミッション:8ミニッツ』は繰り返していくことによる画面に映る細かい伏線や真相が明らかになっていく面白さがあるのに対して、今作は単に「ここでAすると死ぬからBにしよう」という“選択”をし続ける作業にしかなっていない。
それは結局のところゲームを攻略するときのトライ&エラーでしかなく、その単純すぎる構造には少し肩透かしを食らった気分になってしまった。

まあそもそもがゲーム的な作りを狙っているのだろうしこんなこと言うだけ野暮なのかもしれないけど。個人的な好みで言うと、一度観れば十分かな。
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