えびちゃん

イーダのえびちゃんのレビュー・感想・評価

イーダ(2013年製作の映画)
4.2
汚れなき少女時代との別れと、本当の自分との出会いの旅。
1962年ポーランド。天涯孤独で修道院育ちのアンナは尼僧見習い。シスターから実は伯母がいると知らされ、修道誓願をたてる前に会いにいくよう命じられる。自らの本当の名前がイーダであること、宗教、両親の死の真相、伯母の過去などがホロコーストやポーランドの共産主義の抑圧を通して明らかになる。直面する想像を超えた生い立ちを正面から静かに受け止めるイーダと奔放な伯母ヴァンダのルーツを巡るロードムービー。
旅の終わりのヴァンダの選択に悔しさが募る。自身を痛めつけるように酒を飲み喫煙し、男で紛らわせる。重荷を背負うには彼女の肩は小さすぎる。
おぼつかない足取りでヒールを履き、タバコを吸い、ヴァンダのように振る舞うイーダ。そしてヴェールもハイヒールも脱ぎ捨て、たどたどしく踊る少女が大人の女性になるその瞬間。導かれるままだった少女時代から、今までの自分との決別に衝撃を受けながらも深い感動を覚えた。
COLD WARと舞台がリンクするシーンがあり、思わず声をあげそうになってしまった。
美しく奇抜なカメラの構図に唸る。そんな端っこ映しちゃうの…そんな角度から撮っちゃうの…たびたびの大胆な切り取り方に鳥肌立ちっぱなしだった。相反するように、イーダの一貫して謹厳な面持ちを正面から捉えたショットも忘れがたい。
静謐で一切の無駄を排除した素晴らしい作品だった。
本作のイーダはパヴリコフスキ監督の祖母、COLD WARは父と母がそれぞれモデルらしい。ずいぶんドラマチックなご家族。合わせての鑑賞を強くおすすめします。そして監督のさらなる新作をとても楽しみにしている。
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