カツマ

マッドマックス 怒りのデス・ロードのカツマのレビュー・感想・評価

4.4
例えガソリンが切れても止まれない!爆走する死出の道、天国と地獄の谷間をあり得ない角度でドリフトしていく玉砕覚悟の逃避行!火薬庫をまるごと一本の映画に炸裂させたかのような、爆発に次ぐ爆発!2015年の映画シーンをド派手に駆け抜けた最強にして最厄のアクション映画は、ジョージ・ミラーの積年の野心を画面内へと爆散させた、究極のエンターテイメントだった。

公開当時から一大ムーブメントを巻き起こし、それから数年が経っても未だに爆音上映でリバイバルされるなど、2010年代映画シーンのド定番へと名乗りをあげた作品だ。その年のアカデミー賞にて最多6部門で受賞するという快挙を成し遂げ、もしかしたら作品賞も受賞するのでは?と俄かに界隈をざわつかせたのも今となっては良い思い出。『スポットライト 世紀のスクープ』も悪くはないけれど、やはりその年に最も巨大なインパクトを残したのは今作だったと間違いなく言い切ることができた。

〜あらすじ〜

核兵器により緑は消え砂漠化した世界。荒廃した土地でマックスは過去のトラウマに悩まされながらも生き長らえていた。だが、そんな彼も砂漠の支配者イモータン・ジョーの一派からは逃げ切れず、捕らえられて生きながらにして血液を絞り出されることになる。
そんな絶望的な状況の中、軍団の大隊長フュリオサがジョーの妻5人と共に逃走を図った。妻の何人かは身籠っており、ジョーは自らの子を取り戻すために彼女たちを追走した。
その追っ手の一番手にはジョーを盲信するニュークス、そして血液袋として連れてこられたマックスが乗っていた。武装車の前面に括り付けられたマックスは、戦闘の最中に脱出。今度はフュリオサたちのタンカーを乗っ取り逃走しようとする。しかし、そのタンカーはフュリオサにしか運転できない仕様になっており・・。

〜見どころと感想〜

散々製作が難航し、メル・ギブソンも降板し、これはもう世に出ることはないか、と思われた本作だが、主演をトム・ハーディに託し、女性陣を充実させたことも功を奏したか、結果として見事な着地を決めることとなった。スタントマン大丈夫か!?というシーンが次から次へと押し寄せる怒涛のジェットコースター映画であり、アクションだけに頼らないメッセージ性も同時に兼ね備えたハイブリッドかつ高品質を実現した稀有な作品となっている。

フュリオサ役のシャーリーズ・セロンはその名の通り体当たりの演技でオスカー女優の貫禄を見せつけ、5人の妻たちからもライリー・キーオ、ゾーイ・クラヴィッツらはその後出演作が相次いでいる。主演がトム・ハーディでありながら彼はあくまでサポート。物語の主軸は女たちの戦いであり、それが今の時代に絶妙にフィットした。

あのトラック横転のシーンは映画史に残したいほどのインパクト!アクション映画の真髄を見せつける、ジョージ・ミラーの果てなき完璧主義の産物が生んだ、怪物のような作品だ。アトラクションでは終わらない、全方位的な視点から映画としての醍醐味を炸裂させた後世に残したい一本でした。

〜あとがき〜

かなり今更感はありますが、このたびネトフリで出てきたので小さい画面で今作を鑑賞してみました。やはり映画館で見るべきだとは思いますが、何回見ても同じシーンで血湧き肉躍る感覚を味わえるのは変わらないような気もします。

今作では戦闘向きではない女性たちも決死の戦いに参加していて、守られるだけではない強き女性像を提示していたのは現代までの風潮に先鞭をつけた感がありますね。シンプルイズベストですが、中身はギッシリ。やっぱりその年のアカデミー賞作品賞は今作が相応しかったんじゃないかなぁと、今になってより強烈に印象付けられることとなりました。
カツマ

カツマ