容赦のないバイオレンスとアクションから一時も目が離せず、心理スリラーに心が掻き乱されるような衝撃を受けた。
警官の便利屋として凶悪犯罪を繰り返すアウトローな父親たちに育てられたファイ。少年から大人への過渡期に、闇社会に生きる父親達から向けられる無償の愛情を疑ったことはない彼だったが、ある転機をきっかけに自身の過去を掘り起こしていく。
覚醒後のリベンジで発揮されるファイのアクションスキルの高さに只々驚くばかり。此の親にして此の子ありだ。
怒りと哀しみに翻弄されながら、実の親と育ての親の間で、無言の自問自答を繰り返す姿はこちらも苦しさが込み上げてくる。
悲痛な運命を背負いながら懸命に生きるファイを演じたヨ・ジングが、中堅俳優達に負けない存在感のある演技を見せてくれている。キム・ユンソクは狂気のオーラと表情が凄まじくて、もう居るだけで怖い。
名シーンで発せられた「怪物から逃れるには、怪物になるしかない。」は、側から見ると救いがない言葉だが、当人達にとっては未来への道が開ける救いの言葉だ。
ファイの人生を注いだ決断が、観る者の肩にも重くのしかかる。忘れられない作品になった。