新潟の映画野郎らりほう

ジャージー・ボーイズの新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

ジャージー・ボーイズ(2014年製作の映画)
4.5
【あなたの映画に恋してる】


後部荷室に積載した金庫の荷重に依って、前輪が路面から浮き上がり 制御不能のウィリー走行に陥った車両が、ちょうど 上方の街路灯を“見上げる”形でフラフラと前進してゆく ― 後に長期に渡る金銭悶着に苛まれながらも 歌手としての光輝へとひた走るフランキー(ロイドヤング)の姿が既に暗示される。

ボウリング駐車場上方に光るネオンサイン。ラストシークエンス/演者総登場群舞に於けるストップモーションを模したポージング。
それら頻出する“見上げる”モチーフは、フランキーが 何を目指し、何を拠り所にしていたのか、そして 強く希求しながらも その光輝には絶対に辿り着けない ーだからこそ希求し続けるー ことの表徴でもあるだろう。

であるからこそ『階下のフランキーに依って、自宅階段踊り場に佇む愛娘:フランシーンの姿が“見上げられた”』瞬間、この親娘の顛末が否応なく諒解出来てしまうのである。


『君の瞳に恋してる』~スタジオで歌唱する傷心のフランキーの眼差しは上方を向いている。
その直後、キャメラは上空から楽曲発表会場を“見下ろす”かたちで切り返す。

無論そこには 愛娘:フランシーンの眼差しが宿っている筈だ。前述した親娘の階段の“見上げる/見下ろす”との見事な呼応であり昇華に、“映画を見つめる事”の愛おしさと歓びが 堰を切った様に止処無く溢れ出す。


ずっと〃、私の傍にいて下さい。
私は―、あなたの映画に恋してる。




《劇場観賞/映画遠征(ティジョイ長岡)》