ラウぺ

白鯨との闘いのラウぺのレビュー・感想・評価

白鯨との闘い(2015年製作の映画)
3.7
「白鯨との闘い」という邦題は興業上の理由もあるのでしょうが、正直に言うとこの映画の内容には合わないと思います。
また、エイハブ船長の「白鯨」の元になった捕鯨船の実話をトレースしているので、鯨とのバトルのみを期待していくと期待外れとなるでしょう。
ネタバレになるので具体的には書きませんが、船が鯨に襲われてからがこの物語のキモです。

原題は「In the Heart of the Sea」で、Heartは心臓のHeartなので、中心とか、奥とか深淵とかいった意味になるのでしょうか。「地獄の黙示録」のベースとなった「闇の奥(Heart of Darkness)」のHeartと同じ意味と解すべきでしょう。
映画も鯨に襲われるところは映像的にハイライトですが、それだけではない、海の奥(水中ではない)に潜む、恐るべき過酷な世界に踏み込んだ人間のサバイバルを描いた映画。

今風な映画なので、船が出港してから鯨と遭遇するまで割と話の進行は早いのですが、後半の各登場人物の運命を思うと、上映時間が20分くらい長くなっても鯨と遭遇するまでにもう少し人物描写を丁寧に描いていたら、もっと劇的な内容になったのではないかという気がしました。

気が重くなるようなテーマながら、海洋の映像や帆船の美しさは絶品で、クリス・ヘムズワースをはじめとする登場人物の描写と相まって、意外と見終わってからの後味がすっきりとした印象を残す名作だったと思います。
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