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フランシス・ハの東京キネマのレビュー・感想・評価

フランシス・ハ(2012年製作の映画)
4.5
この監督はセンスがいいですねえ、なかなかのもんです。 モノクロにしたからってニューヨーク派になるもんじゃなし。 構図やモノクロの色彩設計(特に夜)をちゃんとしていないと、この雰囲気にはなりません。 正直言えば、アーヴィング・ペンかゴードン・ウィリスくらいまで絞って欲しいところ(つまり、ハイコントラストに)ではありますが、それでも素晴らしいモノクロ映像です。 手持ちだといきなりヌーベル・バーグになっちゃうので、フォローも絶えずステディでやってますしね。 プロの仕事です。

内的心象風景って映画しか出来ない方法論ですからね。 カメラで撮影するという致命的な条件がある訳ですから、どう考えたって第三者的客観風景にしか本来ならないものなんです。 それを人の感情的空間描写に創り込むのですから、至難の技なんですよ。 昔だとダグラス・トランブル、最近だとダーレン・アロノフスキーもとても巧いですが、この人たちのようなトリッキーな方法だとイっちゃってる世界にしかならないですからね。 だからこういった方法論は貴重なんです。

多分最近のSFX技術が行くつく所まで行っちゃったことへの反作用だとは思うのですが、こういったアナクロ的なモンタージュ表現のような原点回帰は時代の必然のような気もします。 で、惜しむらくはこの映画、全然「間」が無いのですよ。 沈黙の空間がないの。 音楽のセレクトも抜群にうまいので、むしろ言語世界のツーマッチ感でアップアップになっちゃうのですよ。 なので、もちょっと長くなっても良いから深閑な映像表現が欲しかったですね・・・。


それはそうと、グレタ・ガーウィグは素晴らしいですね。完全にやられました。
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