馬井太郎

ニンフォマニアック Vol.1の馬井太郎のレビュー・感想・評価

ニンフォマニアック Vol.1(2013年製作の映画)
3.0
タイトルの後、マシントラブルかと思えるほど長い無映像、いきなり薄汚い塀や壁に迷路のような路地裏か、薄っすらと雪・みぞれが降っている。錆びついた換気扇、四角の穴の中にカメラが入っていく。
およそ店とも思えないところで買い物をしたオジ様セリグマンは、血みどろで倒れている女を見つける。かなり後になってからジョーと名乗ったこの女は、救急車も警察も拒否して、あろうことか、オジ様の家のベッドに横たわる。どんなミステリーが展開するのか、のワクワク気分は、「前から3発、尻から5発」で一気に崩れ去った。
血みどろジョーは、まさしく彼女の半生そのものであった。彼女がくわえた多くの男のペニスを足して伸ばせば、火星にも達するという(思わず笑ってしまった)その証の血の象徴・勲章であった。
爽快なラストシーンは、ジェロームと濃厚に抱き合うジョー、その瞳が天井の一点に止まる。そこで、彼女が口に出した言葉、これこそ、観客の気持ちそのものだ、と私は、心のなかで手を打って、ラース・フォン・トリアー監督に負けた、と叫んだ。ブラックアウト。
それにしても、こういう映画を観るにつけ、うんざりさせられる、男ってぇのは、何ともだらし無く、情けねぇ生きものだ。

帰り際に、受付に眼をやった。
次の部のお客の対応に忙しい。列ができている。
どれをご覧になります?
おひとり様ですか?
お好きな席、こちらからお選びください。
淡々と、同じ言葉で、同じ調子で、無機質に彼女らは金を受け取り、切符を手渡す。こうして応対した客の身長を全部繋げて伸ばしても、地球の一周にも満たないだろう。