B5版

ニンフォマニアック Vol.1のB5版のレビュー・感想・評価

ニンフォマニアック Vol.1(2013年製作の映画)
3.4
性依存という公には口に出すには中々躊躇する題材を扱う一風変わった作品。
このテーマで前後篇の長編映画をつくろうぜと意気込み、至極真面目な体をとりながらも作家の個性爆発な作品を生み出すトリアー監督は私が思うよりやはり大分ロックなお人のようだ。

路上に倒れていた主人公を老年の男が部屋まで連れ帰り看病するところから物語は始まる。
女がこれまでの人生に起きたことを語り聞かせると、男はそこで起きた事象を魚や植物に喩え語る。それらはごく一般的で自然な営みの延長線にあるかのように。
その会話は医者が患者に医療行為を施すようであり、また現象を篩い分けて分析していく博物学の様でもあり、存外耳に心地良い。対象のどぎつさを勘定して尚優美とすら感じるシーンだ。
扇状的な題名からして宣伝屋泣かせの代物だが、エロティック至上主義な哲学不足のポルノに陥る訳もなく終始上品な仕上がりだと思う。
独自の感覚を持ち、臆しないというか、己の立ち位置や自身の映画が世界に齎す影響に興味がなさそう(失礼)な監督だからこそ、観客としては与えられたものをフラットな気持ちで鑑賞することができるのかもしれない。

それにしても演じる役者は気合が要ったと思うが、よくこんな人を捕まえられた。
若き日のジョー役の俳優ステイシー・マーティン、西洋絵画のように美しい。
コケティッシュで中性的な顔に、物言いたげな目線、肌を覆う産毛さえ美しい美少女との蜜月。用法容量を弁えなかった故に深く嵌まり込み、勝手に墓穴を掘る男達の悲喜交交。
vol.1ではお得意のダークな笑いにまだ笑える余裕があったが、2はさらに痛々しくなりそう。
求めた存在を得たはずが欠乏した感覚。快楽が逼迫した精神にひれ伏し力つきたのか、あるいは"秘密の要素"によって…?
ボロ切れのように捨て置かれ、露悪的な物言いの疲弊しきった彼女は一体どこに帰結するのか、予測がつかない。
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