Kaoru

グレート・ビューティー/追憶のローマのKaoruのレビュー・感想・評価

4.0
昔のイタリア映画が得意とする象徴的なシーンの羅列で美しくアートな作品です。

イタリア映画は何を隠そうアタシの専門。このソレンティーノさんという監督も、主演のトニさんも最近のイタリア映画でよくお目にかかるようになりました。

主演のジェップ役トニさんは、アタシの中ではイタリアマフィアのイメージそのもの。笑顔がめちゃめちゃキュートなおじさんで、スーツの着こなしも最高。たたずまいから歩き方や口調まで人間的な余裕を感じます。イタリアのマフィアは勿論人にもよるのだけれどもここ近年ではとくに見た目なんかは普通のステキなおじさんだったりするんです。いかにも悪事に手を染めてますなんていう容姿のボスは少し前の時代。トニさんは現在ステキな先生の役から、最低な政治家まで全て自分のものにしてしまうベテラン役者さんです。

今のローマという街は間違いなく映画によって育てられました。ローマの休日やフェリーニの甘い生活など、映画が先にきてそのイメージ通りに街が変わっていったとても珍しいケースだと思います。そうやって映画と共に栄華を築き(シャレじゃないからねw)一周して倦怠期に入ったワケです。

でもこの映画に象徴されるのは、倦怠美。考えてもみればワインが年を重ねるごとに値がつくように、人も年齢を重ねるうちに魅力を熟させるワケで、人間的だけれども魅力のあるおじさまおばさまたちがたくさん出てきます。

はっきり言って内容はむつかしいです。綺麗そうでイマイチ綺麗さが分からないような言葉、分かりそうで分からなそうな熟年の想い、情緒的そうで掴めないシーンの数々。アタシは今回3回目の鑑賞ですが、間違いなく何度か見るうちに少しずつ分かるという、いかにもヨーロピアンが好きそうな構成になっております。分かる映画がいい映画とは限らない。解ることのできなかった自分の理解力が、年齢を重ねてから肥えていって理解できた時にはじめていい映画!と思えるのかもしれない。

忘れ去られた過去の遺産、手入れされていない無数の汚い遺跡、疲れた人たち、壊れかけた建物たち、そんなのも全部、綺麗と思わせてしまう力が確実にローマにはあるの。

1つ、とっても注目してほしいものがあります。主演のトニさんのスーツの着こなし方。60代の設定で、自らもそのくらいのご年齢なのだけれども、素晴らしく素敵です。歩き方や姿勢を見ても、この人は服に着られてない。完全に着こなしておられるのです。年を重ねないと出せない色気というのはホントにあるんだなぁと感じることができます!!
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