アベルの小さな世界の作品情報・感想・評価

アベルの小さな世界2010年製作の映画)

Abel

製作国:

上映時間:85分

4.0

「アベルの小さな世界」に投稿された感想・評価

TOT

TOTの感想・評価

4.0
父親が家を出てから心を閉ざし、話すことを辞めてしまった9歳の少年アベルは、メキシコの地方都市アグアスカリエンテスの病院に入院していた。
大都市メキシコシティへの転院を勧められた母は難色を示し、家に連れ帰る。
数日後あるきっかけで再び話し始めたアベルは、母の夫、姉弟の父として専制君主のように振る舞い始める。
戸惑いながらも回復の兆しかと彼の行動を受け入れる家族だったが、ひとりの訪問者を家に招き入れることで状況が一変する。
それは他ならぬ実父だった。

ディエゴ・ルナの長編第1作目。
デビュー作には作家の全てが詰まっているというけれど、コメディの顔をしながら胸締め付け、しっかりと余韻を残す作品。
とても好き。
少年アベルを通して、アメリカに出稼ぎ移民する父親、残された家族を養う母親への負担など、メキシコの社会問題が見えてくる。
“父”アベルの姿に最初驚き、その愛らしさに、くすりと笑いが漏れたけど、彼の真剣さと痛ましさに、すぐに涙が溢れだす。
冒頭、かたつむりを見つめるアベルの姿など、繊細な演出に監督ディエゴの確かさを感じる。

エンドロールの献辞はディエゴ・ルナの亡くなった母と当時の妻、息子、そして父に捧げられている。
In memory of my mother.
For Camila, Jeronimo and my father.

インタビューやDVDの特典映像でもディエゴが話すように、2歳で母親を亡くし、父親に育てられ、大人として扱われた彼のパーソナルな心情も反映されている。
アベル演じるクリストファーは今作で演技初体験、約400人のワークショップを経て選ばれたそう。
ディエゴ曰く当初からノン・アクターで考えていて、子供は生来のアクターだからとのこと。
彼の当時2歳の息子ジェロニモが繋がっていない携帯を持って祖父と話している姿を見てそう感じたそうで、彼はフリをしているわけじゃなく、彼の中では本当にそこに祖父がいたんだろうと。
柔らかくて素晴らしい感性だと思う。
実際、クリストファーには脚本を渡さず、毎日現場で説明し演技指導したそうだ。

また、舞台は大都市メキシコシティではない場所を探していたら、たまたまディエゴも共同脚本のアウグストも一時住んでいたことがあったことがわかって、アグアスカリエンテスに決まったと。
アベル役クリストファーもアグアスカリエンテス在住。

アウグストは他の作品の脚本を読んで気に入り、会ったら高校の時の同級生だったそうで、アウグスト曰く、お昼によくサンドイッチ取られてたというエピソードもかわいらしい。

ラテンビート映画祭で2010年、2013年にも再び上映されたようだけど、またいつか上映されたら素敵だ。
監督ディエゴ・ルナちょっとけっこうすごいと思う。
この繊細で明るく優しい世界を大きなスクリーンで観れたらいい。
YusukeAndo

YusukeAndoの感想・評価

4.0
ラテンビート映画祭で鑑賞。
重苦しい作品の多いラテン映画の中でも希望を感じました。
子役もかわいいしラストも味があったのでまた見たいです。
Clara

Claraの感想・評価

3.9
2010年、ラテンビート映画祭で上映。
2013年、同映画祭にてレトロスペクティブ上映されたため、その際に鑑賞。原題「Abel」。

父の失踪後、心を閉ざした9歳のアベルは、ある朝突然「自分は子供たちの父親だ」と言いだし、大人びた言動で周囲を驚かす。
大人の都合に翻弄されることを拒否したアベルの心の揺れを丁寧に描いた作品。(引用)

過去の上映作品の中から選りすぐりの3作が特別上映され、これはそのうちの1つ。
それでも満席くらいに多くの方が鑑賞なさっていて、劇場内には幾度も笑いが。

子供の心の繊細さを感じさせ、決して明るいテーマではないと思うが、心的ショックでパパになりきるアベルをはじめ、子供たちが可愛らしい。
子供らしい姿や、パパになりきれていない姿…そういうのが何だかほほえましく、つい笑ってしまうような映画だった。

監督はメキシコの人気俳優のようで、これがフィクション映画監督デビュー作品とのこと。
子供たちの演技がとても上手だったし、DVDがあればいいのにと思っている。
ロードムービーっぽさがあるが、ロードが苦手な私でも夢中になれたので、同じような人にもおすすめしたい。