2015.1.24 角川シネマ有楽町
一昨年の事件的映画であった台湾先住民族セディック族の反乱を描いた(霧社事件)『セディック・バレ』のウェイ・ダーションが脚本とプロデュースした本作。彼が作り出す物語は崇高な精神性とそれに伴う汗が感じられる。
1931年台湾南部。漢人、台湾先住民、日本人の混合の弱小野球部が甲子園という夢に向かって躍動する熱き物語。差別と偏見と戦いながら自分たちの境遇を恨み時に嘆きながら前を向き集団で一つの夢に向かっていく。同時期に公開された同じく野球ものの『バンクーバーの朝日』で描かれなかった夢への情熱と葛藤が見事に描かれる。永瀬正敏が見事に演じる監督という夢に向かうブレない存在が映画の舵を取り多数の生徒の物語を大きく見せ混合チームが少しずつまとまっていく様にカタルシスを感じる。そもそも彼らが情熱を燃やす野球というものは民族を超えたある種の共通言語でありその美しさこそがメジャーリーグでジャッキー・ロビンソンを生んだりと差別を超える事ができる高貴な存在なのだ。
上映時間185分十分な熱量に引き込まれ胸熱くなる物語。スポ根物でありながらも各民族の置かれた境遇に繊細な心の揺れ動きも感じつつ鑑賞後はジーンと感動を味わえる。野球がわからなくたっていい。彼らの夢に向かう情熱を映画館で是非感じるべきでありますよ。
『セディック・バレ』は間違いなく超名作なのであわせて是非。ウェイ・ダーションはアイデンティティの為に映画を撮るという使命に燃えたあついヤツなのです。