ひこくろ

砂上の法廷のひこくろのレビュー・感想・評価

砂上の法廷(2015年製作の映画)
4.1
言葉と映像の使い方がとても上手い法廷ミステリーだなぁ、とまずは感じた。
舞台はほとんどが法廷で、繰り広げられるのも完全に会話劇。
でも、証言とともに映像で描かれる過去回想は、語られる言葉とは異なっている。
一見すると、観客だけに証言の嘘と事実が伝わってくる、ようにも見える。
が、実際に映像の回想シーンが事実だという保証はどこにもない。
誰かの勝手な思い込みや、もしくはそれすらも捏造された事実かもしれない。

何が事実なのかがまるでわからない。
その思いは、裁判の進み方によってさらに高まっていく。
主人公の弁護士ラムゼイも、相手側の検事も、事実や正義などは一切求めていない。
あるのは、いかにして有利に裁判を進め、自分の側の結論を勝ち取るかだけだ。
戦略を駆使して、自らに有利な証言を引き出す。それが事実かどうかはどうでもいい。
真実とは無関係に、この応酬が続いていくのは、ちょっと観ていてめずらしかった。

勝ち負けだけを競い合う、まるでゲームの勝負のような裁判。
そう思わせておいてから、ある証言をきっかけに真実の重みが浮かび上がってくるのがいい。
真実がわからないと勝てないとみたラムゼイも検事も、今度は必死になって「有利な真実」を描こうとしだす。
なのに、その真実すらも簡単に二転、三転してしまう。
ここら辺の展開は、ひたすら上手いなあと感心した。

個人的には真実を暴くとか、正義を貫く、といったタイプの法廷ものが好きなので、あんまりタイプではなかったけれど、先の読めない面白さって点では間違いない映画だと思った。
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