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仁義なき戦い 代理戦争のyoshiのネタバレレビュー・内容・結末

仁義なき戦い 代理戦争(1973年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

言わずと知れた、邦画の傑作シリーズの3作目。DVDを所有しており、むしゃくしゃした時によく見るヘビーローテーション映画。
群像劇ゆえに様々な見方があるが、私は毎回、この映画を見終ると必ず思うことがある。
それは「教育が人を作る(変える)」ということ。

代理戦争の意味はというと…
広島市最大のやくざ村岡組組長、村岡常夫は体調不良により病床に伏すことに。
その跡目を巡る策略の結果、広島は二分され、広島への勢力拡大を狙う神戸の二大やくざの代理戦争へと突入します。
菅原文太が演じる広能の組も、その争いに巻き込まれていきます。

この抗争劇を縦軸として、渡瀬恒彦の演じる若者、猛の青春と成長が挿入されます。

ヤクザが教育?恐怖支配の間違いだろ?という方もいらっしゃるでしょうが…
語らせてください。

まず冒頭、梅宮辰夫演じる神戸明石組の岩井がプロレス興行中の広能を訪ねる。
岩井が広能を見たまま手を出すと、子分が何も言われずとも当たり前のようにご祝儀を岩井に差し出します。
何という阿吽の呼吸でしょう!
そこに子分への岩井の教育力が伺えます!
(確か、ここは雑誌「映画秘宝」で杉作J太郎氏も触れていた)

そして荒くれ者の猛が母親と恩師に連れられ、広能組に入るシーン。
「お母さん、極道言うたらですよ、生みの親を捨てることになりますがの!あんた、それでええんですか?」と広能。
お願いしますと母親が帰る間際、早速広能の躾が入ります。
「靴、揃えんかい!」「見送らんかい!」と激が飛び、猛は素直に従います。
素晴らしい礼儀の指導です!
広能の責任感も伝わります。

いつしか猛は母親に高い洋モクをプレゼントするように…
反抗していた母親への感謝を表すのです。

話は進み…猛は先輩(川谷拓三)に唆され、広能に許可を得ず、敵を暗殺しようとします。
「ぜひ、やらせてください!お願いします!」
親分の為なら…良かれと思って…
この時には猛は仕事に充実感を持ち、親分の役に立ちたいと思っているのです。

捨てばちの野良犬が礼儀と忠義を身に付けるまでに成長したのです。

しかし失敗。罰として広能に半殺しにされます。物凄い剣幕です。まるで猛獣の躾です。
広能は怒りが収まると、猛を気遣います。
彼は子分を見捨てません。怒ったのは愛のムチ、戒めなのです。育ての親としての教育なのです。
(冒頭、川谷拓三にも同じ事をします。)

ラストで猛は敵である槇原(田中邦衛)を的にかけようとしますが、先の先輩の裏切りで映画館で待ち伏せを食い、逆に銃殺されてしまいます。
(この時のザラついた映像は当時のニュース映像に似て、とてもリアルでアーティスティック。最早伝説ですね。)

火葬場で猛の骨をつまむ広能と母親。
火葬場の外で敵に襲われ、路上に散らばる猛の骨。泣き叫ぶ母親。
まだ熱い骨を握りしめ、怒りに震える広能。
ろくに埋葬すら出来ない、安らかな眠りにつくことすら許されない抗争の激化がたった3分以内に映像で語られます。

「戦いが始まるとき、まず失われものは若い命である。そして、その死がついに報われた例がない。」
ナレーションが胸に沁みます。

(正しい道ではないが)人の役に立ちたいと、命をかけて願うまでに成長した若者。
広能の教育の賜物です。

最近ニュースでは、児童虐待、育児放棄、体罰、指導者のパワハラ、教育者の不祥事が毎日のように報道されています。

(半殺しはマズイですが、)この作品の広能に見る子分への指導と気遣い、そして評価と筋の通し方に…
私は親として、組織の人間として、教育を考える時、見習う事が多いと思うのです。
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