Amour fou(原題)の作品情報・感想・評価

「Amour fou(原題)」に投稿された感想・評価

horahuki

horahukiの感想・評価

3.8
人は本質的に平等でも自由でもない

ボディスナッチャー系ホラー『リトルジョー』が話題のジェシカハウスナー監督による実話を基にした愛の物語。全く知らない監督だったので、この機会に過去作を漁ってる(まだ途中)のだけど、長編デビュー作『ラブリーリタ』の時点でホラー味をバリバリに効かせてくるあたり、「こちら側」の監督感があって割と好み。

ただ、本作は全くホラー味のないドラマ。とは言え温かみも一切なく、病んだ人の内面を精神分析的に観客に直視させる。その先に見えてくるのは「虚像」でしかない人間という存在の虚しさと噛み合うことのないエゴイズム。更にはそのエゴイズム=自分の表象すらも揺るがすような嫌な感覚。

私はwiki見た程度にしか知らないのだけど、本作は憂いを抱えていた劇作家ハインリヒフォンクライストがヘンリエットフォーゲルとともに拳銃自殺をはかった史実をもとに改変を加えたもの。その女性との間に愛はあったのか、そもそも愛とは何か。自殺という結末が周知されている以上、観客は自然とそこに至る過程を精神分析的に捉えることを強要される。本作が提供するのはその心的過程の観察であり、本作はそれに耐えうる強度のある作品だと思った。

本作が主に描くのは心のレイヤー。見えているようで見えていないもの。自分の心が作り出す虚像としての相手方。どのレイヤーが深層でありその人自身なのかは本人にすらわからず、そんな虚の集合体としての人間同士の間で成り立つ(かのように見える)「愛」とは一体何なのか。綺麗な花越しにヒロインを捉えつつも顔はうまく見えない。そんなファーストカットに本作の趣旨が凝縮されている。

大きな動きを見せないが故に固定化された画面内で細やかな仕草に目がいくよう観客を誘導する。画面自体は固定化されているのに、瞬きや僅かな視線の移動から感情が背後に広がり出し、その繊細な動作を長回しで追うために浅薄な喜怒哀楽の固定化を許さず、一方に振れたかと思えば他方に振れ…を止めどなく繰り返し反復する。ファーストカット同様に外面と内面の固定と流動を対比的にしつこいほどに演出する。

更には画面内に人がたくさんいるのに心的孤独が際立つよう構成されているのも素晴らしい。本作では画面内にはメインとなる被写体以外にも複数のキャラクターが必ずといっていいほど同時に映る。彼らはそれぞれの日常動作を続けるのだけど、メイン被写体が画面内における主人公であるならば、その表舞台に現れたかと思えば画面後方という自身の生活の中に再び飲み込まれ埋没する。残されるのは自分だけ。

監督の新作『リトルジョー』は明日から公開なので楽しみ👍植物の臭いが人をおかしくしていく『ボディスナッチャー』系らしいので超好みな予感♫というか、これ平均2.9とかフィルマ厳しいな!
動きを排除した意欲作。
が、つまらない。

人物配置、家具の配置は優れている。
というより、その2点にしか神経を使っていないように見える。

動作がほぼ無いので、カット内で画が変化しない。
加えて長回しが主なのだから、監督はなかなかの自信家だ。
それだけにピントとフレームインという動きのあった
ラストシーンは鬱憤が幾分晴れたが。

光も単一でつまらない。
色の配置も優秀ではない。

人と家具の配置の面白みだけで90分楽しませれるほどの
力のある画には仕上がっていなかった。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

1.5
【リアルでやらかした『若きウェルテルの悩み』】
皆さんはジェシカ・ハウスナーをご存知だろうか?えっ知らない。大丈夫です。ブンブンもよく知りません。ただ、カンヌ国際映画祭においてジェシカ・ハウスナーは常連監督で『Inter-View』がシネフォンダシオン部門でスペシャルメンションを受賞してから勢いづいて、『Lovely Rita』、『Hotel』、『Amour Fou』はある視点部門に出品されました。そして今回初めてコンペティション部門にジェシカ・ハウスナー進出を決めました。そんな彼女の最新作『Little Joe』は美しさと医療価値のある植物を開発したシングルマザーの疑惑を描いたSF映画となっています。今回、ジェシカ・ハウスナーコンペ入りを記念して、過去作『Amour Fou』を観てみました。

本作は、ドイツの劇作家ハインリヒ・フォン・クライストと癌に苦しむ人妻ヘンリエッテ・フォーゲルがピストル心中した事件を基にした歴史劇です。まるでウェス・アンダーソンのような可愛らしい舞台装置を固定カメラで撮り、絵画を観ているような雰囲気で、思いつめた劇作家の晩年を描いています。そして内容は、ある意味『若きウェルテルの悩み』そのものです。『若きウェルテルの悩み』はヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの失恋話を基にしたラブストーリーで、美女に思い詰めたウェルテルがピストル自殺するまでを描いた作品。ウェルテルは小説の中で自分を殺すことで、自分の心にあるモヤモヤを解放したのですが、ハインリヒ・フォン・クライストは残念ながらバッドエンドでした。そんな彼を映画というフィクションの世界で殺して成仏しようと思っているかのごとくこの作品は君臨します。居心地が悪く、全くもって噛み合わない世界。美しい情景なのに、合わない歯車を無理やり動かすようなぎこちなさが作品全体に伝播していき、ハインリヒ・フォン・クライストがひたすらに悶々とする様子を観客に突き詰めます。

なので、歴史クラスタとか、ハインリヒ・フォン・クライストクラスタでないと割ときついところがあり、退屈なウェス・アンダーソンという枠組みを抜け出すのは容易ではありません。ラストのピストル自殺シーンのショットのカッコよさこそプラスに働くが、Not for me 割と辛い作品でした。Filmarksではジェシカ・ハウスナーはそこまで歓迎されていないのですが、果たしてコンペティション初進出作品のレベルはいかがなものだろうか?
つまんなすぎて途中退場。好きそうな題材と画面と女優なのに、GoTのせいでどんな映画見てもゴミに見える期間はいつになったら終わるんすかね。