アカデミー作品賞獲得も、賛否両論と聞いていた本作。
原因は、極端に主観的に観ないと駄目な作品なのに、主人公に感情移入するのが一般観客には困難な構造をしてる、という事でしょうね。
この映画は演劇の世界が舞台になってますが、本質的には『映画愛』を描いています。
映画鑑賞にあたり登場人物への共感度はそれほど重要な要素ではないとは思いますが、『鑑賞者』と直に繋がってしまう 『鑑賞対象そのもの』(本作の場合は『映画』)を作品の題材に用いる場合は、『鑑賞者』側に寄り添う視点がないと鼻についてしまうという事です。
同じ映画愛映画なのに皆に愛されている『ニューシネマパラダイス』と比較すると分かりやすいんですけど。
非常に良く出来た作品ですし、業界受けだけで評価されてる訳でない事は理解しながらも、観客視点で作品を語る事に虚しさを覚える人が出ても仕方ないかな、と。
当然イニャリトゥ監督は承知の上だと思いますし、承知の上だろうと思われる事を恐れてなさそうな所も感じます。何せアカデミー獲ってるし(笑)。
まあ、その辺が合うか合わないかだけの問題で、撮影・音楽・演出 等非常に凝っていて、凄い作品なのは間違いなし。そこは強調しておきます。賛否分かれる方が作品としては尖ってて面白いですしね。
以下 変な話ですが、
もし本作が主要な賞レースから全然相手にされてなかったとしたら、それはそれで作品の性質上より滑稽でウケると言うか、今より多く一般客の評価も得られてた気がするんですよ。
それすら含めた監督の狙いだったと言うと考え過ぎかも知れませんが、
副題とはちょうど逆の印象を本作自体からは、受けるんですよねぇ〜。