レンタルショップ店長M

ラ・ラ・ランドのレンタルショップ店長Mのネタバレレビュー・内容・結末

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

映画史上最高のエンドロールでした。
久々に映画観て震えました。

僕はこの映画はLA・ハリウッドが舞台という事はあまり重要視していなくて、
『そもそも、この映画は何故ミュージカルである必要があったのか!?』
本当はここがもっと語られるべきだと思ってます。


この映画で忘れられない事は、エンドロールが流れ始めても満員の観客が誰一人として席を立たなかった、という事です。

観客の身に何が起きたのかは観た人なら分かると思うんですが、これはエンドロールで流れた『音楽』の効果であったはずです。

音楽に乗せて、主人公二人の姿がどうしても浮かんできて離れなかった!
多分皆そうだったんじゃないでしょうか。

音楽というのは一種の記憶装置みたいな所があって、思い出の曲を聴けば『あの時』の風景が、気持ちが再生されるものです。わずか2時間の映画でもそれは同じじゃないですかね。

ましてミュージカルは物語と音楽がより密接な関係にありますから、その傾向が強いはずで。ここに本作をミュージカルにした必然性を感じます。思えばミュージカルシーンは、決まって主人公の心に動きがあった時に展開されてましたしね。

つまり、『観終わった後に観客が主人公二人の物語をどの様に思い出すのか』本作はここを大事にしなければいけないと思うのです。
音楽はそのトリガーで、皆それにやられた。

エンドロール開始前後に作品のピークと本意があるのは監督の前作『セッション』でも同じだったので、チャゼル監督の作家性はそこにあり、狙ってやっている事だと個人的には確信していて、観客のリアクションを見る限り今回も大成功でしょう。



以下はその辺りを前提にした、本作に対する僕の感想です。

僕の場合はエンドロール時に頭に浮かんだその姿が、その日々が。素晴らし過ぎて、美し過ぎて、かけがえなさ過ぎて、真っ黒な画面を前に涙がボロッボロ出てきてしまって。

何かを思い出す時に「素晴らしかった」と思えるのか、「こうしておけば」って思うのか、の差ってかなり大きいですよね。
同じ涙するにしても質が違うというか。

で、この主人公二人は絶対に「素晴らしかった」と思える人達だと思うんですよ。


この映画は『夢』がひとつのテーマで、特に最後のミュージカルシーンは構成上ある種の『想像』として描かれていて、ココの解釈により映画の印象は変わると思うんですが

僕は、二人にとって あれが『想像』だなんてとんでもなくて、一つの『真実』に違いないと思えたんですね。少なくとも彼らの中では『真実としても何もおかしくなかった と思えているはず』という意味ではあるんですが。

つまり、そこからラストまでで演出されていたのは『二人がお互いに “この人と出会ったから今の自分がある” と思えている』事。もうこれに尽きると僕は感じたんです。

そしてそれだけは、いかなる解釈においても、共通して「間違いない」と言える唯一の事でもあると思います。


この気持ちがとてもとても重要で。

これは現在 誰とどう生きているか という事とは別次元の問題ですし、
むしろ『過去』を、良い事も悲しい事も全てひっくるめて肯定的に捉えられないと、『現在』や『未来』、そしてその時に自分の側にいる人を大切にしてると言われても僕は「説得力ないわ!」になるんですよ。

そんな事を考えながらラストの二人の笑顔を思い出したら、たまらなくて。
悲しい余韻も確かにあるんですが、それを軽く吹き飛ばす程の、過去・現在・未来全て(要は人生)を肯定するパワーをもらった気がしました。

うまく言えないんですが、僕はこれを切ない物語にする事を主人公二人は望まないと思いましたね。
もう、ただただ拍手を贈りたい。
そう思えた映画でした!


いやぁ〜映画って、ほんっっっとに、良いもんですね!