レンタルショップ店長M

メッセージのレンタルショップ店長Mのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
4.0
『12という数字には意味がある』

世界12ヶ所に突如現れた巨大宇宙船。
各国の足並みが揃わぬ中、主人公の言語学者は宇宙人の言語を解明するために奮闘する。

こういった遭遇物で『意思疎通』に要点を置く事は珍しく、序盤から観客の知的好奇心をくすぐる。


原題は『ARRIVAL(到着・到達)』なのだが、作品の意図を理解する上では邦題の『メッセージ』の方が秀逸であり、さらに言えば原作小説の題名『あなたの人生の物語』そのままが最適だったろう。

つまりメインテーマは壮大な見かけに比べればミクロな所にあり、それは過去の傷や未来への不安を抱えて生きていくしかない我々一人一人に対しての美しい『メッセージ』でもある。

そのために描く必要があったのが『意思疎通と相互理解の大切さ』と、あるSF的な『仕掛け』であり、本作の持つ『未知の言語を用いる宇宙人と世界各国の対話』という構造は、正にそれらを成立させるためにある。


さらに本作にはもっと大きな視点からのメッセージも込められていて、こちらも中々に面白い。

劇中、問題の解決のため全世界での意思統一が迫られる。悲しいかな、全ての国で価値観を共通するなんて事は地球の歴史を鑑みても絵空事に違いないのだが、

実はそれが ある一点においては既に永久的に実現出来ている事実を、本作は物語を通して観客に提示する。大袈裟だが、世界平和の第一歩の提示だ。

宇宙人との意思疎通において、『何』を理解する事を最終段階としたのかにそのヒントがあり、宇宙船の数が『12』である事も実はそれと密接に関係している。

是非この辺り注目して観てもらいたい。


いずれにしろ、相変わらずこの監督は難解というか読み幅がやたらと大きい。
『ブレードランナー』続編を任されたのも納得だ(笑)。